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世良兄弟仇討譚 豺虎の秋月・3 

豺虎 (さいこ・あらあらしく強い悪人をたとえていう語)




離れでは、陽の当たる道を歩かせてやりたいと兄が望んだ月華が、相模屋の膝の上でゆっくりと弄られている。
相模屋の短い指は、湯上りの月華の寝間着の裾から割って入り、中心でうごめいていた。
「あっ……あっ……旦那さまっ……?」
さわさわと扱かれて、幼い茎がゆるゆると勃ち上がろうとしていた。
先端の滲んだ露を認め、嬉しげに相模屋が上下にこする指先に力を込めた。
「お可愛らしい月華さま。この相模屋の手に、初めての精をこぼして御覧なさいまし」
「い、けません。旦那さ、ま。どうか手を、手を止めて……」
はっはっ……と、声を苦しげに喘がせ相模屋の着物を掴み、月華の全身は総毛だって震えていた。
「旦那さま、いや、いや……粗相をしてしまう……お小水を零したら、羽二重の綺麗なお蒲団が……汚れてしまいます……はな、してっ」

身を捩り、這って逃げようとする少年の細腰を引き寄せた。
蒲団に貼り付けるように、両腕を頭上にまとめてしまう。
「いいから。お小水も、皆ここへ零しておしまいなさい」
「いや、いや。お行儀が悪いと兄上に叱られます……はなして、はなして」
眼前にある幼い武家のいたいけな姿が、愛おしかった。
陰間の濃い茎に比べるべくも無い、淡い薄い色の若い茎が切なげにふるふると怯えて揺れていた。
「波が……ああぁ、月華を浚ってしまいます。旦那さま……こわい……しっかりと掴まえて、下さいまし」
「良いのですよ。さぁ」
「いやーっ、さらわれてしまうっ……きゃあぁっ……!」
激しく顔を振る月華の頬は、もうとめどない涙で濡れて、知らぬ世界を覗き見て上気した頬がどこか痛ましかった。
「あぁ……っ。つ、月華の、お……小水が……出てしまうーっ……厠に……厠に……」
襲い来る快感を「波」と表現し、先端から零れ落ちる精を、粗相しそうな尿と思って悶え戦慄する少年を、相模屋は心から愛おしいと思った。
自分の思う色に染め上げる紫の上が、手に入ったと思うと切り餅の一つや二つくれてやるのは、大店の相模屋にはなんでもない。
「お可愛い月華さま。そのように泣かずとも、怖くなどありませぬよ。さあ。お褥が汚れぬように相模屋が入口に栓をかってあげましょうね」
細い腰を懐にきつく抱きこんで、薄紅に染まった細い茎を口に頬張った瞬間ぴくりと身じろぎ、ひゅと月華の喉が鳴った。
初めて口腔に捕らえられ、大きく見開かれた目が、驚愕に慄く。
「いやぁ……っ……!」
相模屋の腹が波打ち、月華の耳元に熱い息がかかった。
月華の両手が高く持ち上げられると、相模屋の猪首に回った。
「ああ……だんな……さま……良い気持ち」
「つ……?」
ふと、頑是無い大きな瞳が弓張り月の細さになったかと思うと、涙ではなく「くくっ」と異質な笑い声が零れた。
どっと、脂ぎった顔が近づいてくるのを、軽くいなして月華は避けた。
倒れこんだ相模屋の、首の後辺り「亜門」と言う急所に深々と長い針が光る。
すっと右手で抜き取ると、再び転がった相模屋の心の臓めがけてとん……と留めを打ち込んだ。
見た目に似合わぬ、見事な早業であった。
「ふー、そろそろお別れですよ、旦那さま。健気な稚児の仕草は、骨が折れました。さてと仕上げをせねば」
月華は畳のヘリから床下に針を落とすと、そうっと周囲をうかがって、事切れた重い相模屋を押しのけ、息を吸い込み悲鳴を上げた。

「きゃあああぁあーーーーーーっっ。いやあぁあああっーーーーーっっ、誰かーーーっ!」
「どうされました。旦那様!?あっ!」
駆けつけた丁稚にひしとしがみつき、哀れな風情で泣き崩れればよかった。
「ああぁ~んっ……旦那さまぁ!ああぁ~ん……」
「これはっ!?」
騒ぎに驚いて、相模屋の普段の所業を知る大番頭も駆け付けたが、襖の向こうに倒れた相模屋の無様な姿に呆れた。
「まったく、いい年をして年端もゆかぬ童にまで手を出そうとするから、このような末路になるのだ」
「ああぁぁん……番頭さん、番頭さぁあん……えっ、えっん……旦那さまが……」
「よしよし、これは中気の発作だ。おまえのせいなどではないから泣かずとも良い」
泣き縋る美童は、しゃくりあげながら言葉も無く番頭の名を呼びながらかき付いていた。
襟元に紅い吸痕を認め、余りの労しさによしよしと飴など持って来て機嫌を取ってやった。
「えっ、えっ……兄うえ……に逢いたい……兄上ぇ……あぁんっ」
「よしよし、すぐに使いをやろうな」
番頭は、相模屋の死を目の当たりにし、夜通し泣き濡れる用心棒の弟を宥めた。
くすんくすんと番頭の腕の中で啼きながら眠った、愛らしいいたいけな子どもまで、毒牙に掛けようとして情死したのだと使用人達は噂し呆れた。
誰も疑いようもないほど、相模屋の色好きは有名で、散らずに済んだ稚い美童は例えようもなく儚く愛らしく見えた。
北枕に置かれた遺体の枕辺に、用心棒の幼い弟が健気に行儀良く座していた。

「月華」
「あ……兄上。旦那さまが、お気の毒なことになりました。わたくしと、お添い寝してくださるお約束でしたのに、それも空しくなりました」
「突然の中気の発作だったのだと聞いた。お前も驚いただろう?」
「あい。突然ぱたりとお倒れになりました。月華はお優しい相模屋さまが、とても好きでしたのに。もうお話もできなくなって、悲しいです」
「お、お前さま……」
次兄、笹目の腕に支えられて、部屋に転がり込んだ相模屋の御内儀は、動転していた。
色惚けの主ではあったが、主人在っての相模家の身代と内儀も理解していた。
いくら何でも、この幼い美童と同衾しようとして、腹上死したなどとは思いたくなかった。
「この子は?」
「我等の、末弟です。奥方様」
「年の割に幼くて、このようにいつまでも鳥の雛のように泣いてばかりです。相模屋どのが、烏帽子親になってくれるとおっしゃったので、我らも大層喜んでいたのですが、かくなる上は望みも儚く潰えました」
「それは元服のこと?相模家は、費用を約束したのですか?」
「はい。弟を寺小姓にするつもりだと話しましたら、哀れとおっしゃって、早いけれど仮元服をしてやろうと言ってくださいました。誠に人情に溢れたお方でございましたから、気弱な末弟も懐いて居ったのです」
「そう……旦那さまが」
内儀はそこにいる美しい前髪の少年を見つめた。
美貌の兄達と何ら遜色のない、幼い色香を持って月華は露を含んだ目もとで、内儀ににっこりと微笑んだ。
「まあ、愛らしいこと」
「奥方さま。月華は相模屋さまに、とても親切にしていただきました。」
「そうだったの。離れは周囲に人が居なくて、可哀想にずいぶん驚いたでしょう?」
「……奥方さま。月華は旦那さまに何のお手当てもできなかったのが、辛かった……心の内では、旦那さまを父上とお呼びしておりましたのに。ご助命できず申し訳ございません……」
内儀はそれを聞くと、思わず露を浮かべ泣き崩れた月華をひしと抱きしめ、番頭を呼んだ。
「父親代わりの、相模屋の遺言ですから用立てるのが道理です。番頭さん、手文庫を」
「はい」

眼前に並べられたのはまんまと100両。
夕べの50両とあわせて、兄弟はしばらく暮らせるほどの金を得た。







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