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小説・約束・43 

民の話を聞いた、佐藤家当主はこういった。

「ふん。存外、噂というものは、良くできてるものだな。」

「とにかく、良平を呼んできなさい。話がある。」

呼ばれた良平は、気の毒なほど落ち込んだ。

「民さん・・・ぼく、言わないでねって頼んだのに~・・・」

民さんは、毅然としていた。

「犬や、猫とは違うんですよ、坊ちゃん。」

「う~・・・」

勿論、良平も自分に非があるのは分かっていた。

「大丈夫ですよ、坊ちゃん。きっと、大旦那様は、あの子をお医者様に見せてくださいます。」

「本当に、お優しい方ですもの。」

そういわれて、勇気を出して家長の部屋へ向かった。

「良平です、お爺様。」

部屋の外の廊下で、正座した良平は深々と頭を下げた。

「言いつけを破りました。ごめんなさい。」

「悪いとは、思っていないだろう?」

見透かされたようで、どぎまぎしたが祖父の声は怒っていなかった・・・・

「病気の猫を、拾ってきたそうだな。」

「猫じゃなくて、人です。お爺様。」

「ふん・・・で、どうするつもりだ?」

「お医者様を呼んでください。」

「駄目だ、金がかかる。」

けんもほろろな祖父の言葉に、思い切って父の跡をついで、医者になろうと決心したと、良平は告げた。

「だから、一人前になるまで出世払いで、お金を貸してください。」

「わかった。後で、医者を呼んでやろう。」

意外なほど、あっさりと祖父は条件を呑んだ。

「実はな、今日債権者を当たってきたんだが、その殆どに大久保の息がかかっていたと分かった。」

「後妻よりも、質が悪いのは大久保伯爵だ。」

「大久保というのは、誰です?」

話が見えなくて、良平は聞いた。

「・・・おまえの猫を、いじめていた奴だ。」

祖父は、大久保の手口を語った。
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