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遠山の銀(しろがね)と銅(あかがね) 1 

深い深い、紅葉の山に一匹のお使い狐が住んでいた。
名を「銀(しろがね)」という。

銀(しろがね)は、北のお稲荷様の使いで、少しは術が使えた。
気を蓄え、神の使いとして働き手柄を立てるたびに、妖力は増え神さまにいただくしっぽの数も増える。
今は隠してあるが、自慢のしっぽの数も3本有った。
いつかは九尾の妖狐になりたかった。

しかし、今やお稲荷様に詣でるものも少なくなり、暇なときは自由にしておいでと神さまに言われた。
自由にしても良いといわれても、銀には何をして良いのかも分からなかった。

ある日。

一人ぼっちの銀ぎつねは、紅葉の舞い散る奥山で、親とはぐれたちっぽけな山猫の子どもを拾った。
山の中で紅葉の葉っぱを一枚頭に乗せて、ちちんぷいぷいと術をかけてみた。

小さな山猫がくっと人型になる。

逃げ回っているのをやっと掴まえて、組み敷いた。
じゃなく……組敷かれた。


「こんの、化け猫っ!離しやがれっ!ほら、術解くぞ」
「あそんで。あそんで」
「しっぽ、絡ませるなーーーーっ!」

予定と違って、大きくなりすぎた山猫の術を何とか解いた。

「にゃあん……」

膝ににじりよって来る、小さな生き物の体温に触れた。

「俺の好きな魚だ、おまえも食うか?ん……?」
「にゃん」
「俺の名は、しろがねと言うんだ。おまえは、そうだなぁ、赤銅(あかがね)だな」
「にゃ」

一枚の葉っぱを持って来て、ねだるように喉を鳴らした。
一度、人型にしてやったのがずいぶんと気に入ったらしい。
ごろごろと喉を鳴らし、銀の指を甘噛みした。

ちちんぷいぷい。

「おまえ、親はどうした?」
「おや?」
「おまえに餌をくれる、親だよ。……小さすぎて、わかんないか。」
「えさ。しろがね」
「そうだ、賢いな。おまえの名は、赤銅(あかがね)だぞ、覚えたか」

魚を咥えた人型の子猫は狐の懐に入った。

「しろがね。しろがね。おさかな。あそんで、あそんで。あかがね、あそんで」
「あ~、わかった。わかった」

お稲荷様の神使は、初めて自分を頼る小さな生き物に夢中になった。
冬の山の心細い寒さにも、これから降る冷たい白いものにも、二匹肌を寄せ合っていれば春を待てると思った。
ずっと願を掛けていた。

『一人ぼっちじゃなくなりますように』

「葉っぱ。ふるふる」

じゃれて転がる、二匹の傍にはらはらと秋の名残りの紅葉が散った。

「綺麗だな。あかがね」
「きれい。しろがね。ふさふさしっぽ」

慌てて上を向いたが、目尻から温かいものが溢れた。
胸元に這い上がった小さな濃い茶の山猫が、にゃあと鳴いた。

ずっと一人だった、銀(しろがね)。

このまま、ずっと一緒に居たいと願った。







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