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実るほど、頭が下がる稲穂かな 2 

遥(はるか)は、本当に次の日、九州行きのチケットを手にして俺の前に現れた。

俺達を、空港まで軽トラックで迎えに来た遠距離恋愛の相手、穂(みのる)は、可哀想に少しやつれていた。
遥の言うとおり、大学で飼育していた牛豚が伝染病の兆候が出たとかで、全頭、刹処分が決まったらしかった。

「おまえ、やつれたな……飯、食ってないんだろ?」

そういうと俺の胸に頭を預けて、少し泣いた。

「望(のぞむ)が叱ってくれたから、俺、泣いてる場合じゃないと思ってがんばったよ。ありがと、望」
「穂(みのる)。口蹄疫?……って、そんなにひどいのか?」
「うん……ひっく……」

たちまち俯いて、睫毛に露が宿りぽたぽたと零れる涙で、俺のシャツは濡れた。
こいつは昔から、どんな生き物にも、めちゃくちゃ優しかった。
次いでに、俺みたいなろくでもないやつにも優しかったけど。

「美代子ね……黒豚なんだけど……口蹄疫で、おっぱいにひどい水泡ができてたんだ」
「そうか……おっぱいに」(ごめん、興味ない)
「子豚がね、おっぱいを飲もうとすると、水泡が破れるでしょ?痛むはずなんだ、すごく、血が滲んでるし……でもね……美代子、痛くても子豚に一生けんめいおっぱい飲ませてんですよ。次の日、子豚も自分も刹処分決まってるのに……俺、何もできなかった、うわあぁあん、美代子ぉ、ごめんよぉ……みんな、助けてやれなくて、ごめんよぉ……うわぁ~~~ん」
「穂(みのる)、一人で辛かったな」(子豚よりも、おまえが可愛いぞ)

そんな悲しい思いをしている恋人に、おれはバカ野郎と怒鳴ったのだった。

「ごめんな。もっと早くに来てやりたかったけど都合がつかなくて」

俺の胸元で洟をすすっていた穂が、顔を上げた。

「そういえば、ここまでくるの大変だったよね。新幹線は通ってないし。運賃相当かかったでしょ?」

頼りになる遥が、ぽんと穂の肩を叩いた。

「隣村で、農協が花嫁の募集してたんだ。俺ら、幸い名前「遥(はるか)」と「望(のぞむ)」ってどっちにも取れる名前だろ?大嘘こいて花嫁募集に申し込みましたっ!当然、往復運賃無料ですっ!ありがとう農村」

穂は呆然としていたが、そのうち猛然と怒り始めた。

「ひどいっ!俺と言うものがありながらっ。なんでそんな合コンに申し込んだんだよ、望のばかっ。腹立つ~」
「あのぉ、穂(みのる)くん、そこは腹立てないで笑い飛ばす所よ。男の俺らが花嫁になるわけないだろう?」

遊びですむから笑っていなさいと、遥は陽気だった。

「だって、遥はともかく俺の望ってば可愛いんだもの。誰かの目に留まって、田舎の土地成金の息子に目を付けられてしまうかも……ねぇ、望、俺のことほんとに好き?絶対、お金持ちに転ばない?」
「ばっか。好きじゃなきゃ、こんな僻地にまで来るか」
「望~、俺も好き~」

遥は呆れていた。
実際、誰がどう見たって遥の方がいい男なのは間違いないのに、穂には俺のほうがよく見えるらしい。
恋は盲目とはよく言ったものだ。
甘い会話とは裏腹に、次の日参加した合コンで、二人は浅はかな考えに頭を抱えることになった。

穂が心配するのも無理はなかった。
都会から来た望と遥は確かに垢抜けていて、合コンに参加した女性数名よりも、衆目を集めていた。

フォーマル着用と言うことで、スーツを着ていったのだが遥は特に激しく目立っていた。
北欧の祖母の血を色濃く継いだ遥の銀糸の髪が、地毛と知ると周囲は皆、賞賛の声を上げた。
薄い色のついた度入りグラスを外すと、遥の綺麗な灰緑の神秘的な瞳は吸い込まれるように澄んでいた。

純朴な青年達はごくりと唾を飲み、驚いたことに花嫁募集に現れた美貌の同性愛者にうっとりと夢中になった。
同好の士は、どこにでも居るということなのか。
そして、いつも綺麗な生き物は、人々の独占欲を刺激するのだ。
その中でも指折りの資産家兄弟は、揃って堂々と遥を指名した。

「美しい遥さん。俺、クワを持つ手が震えてる」
「俺も……、カマを持つ手が震えてる。」

その顔は太陽に染められて、まっかっかだった。

「えっと。一応、性別男ですけど、ありですか……?」

妖艶に微笑む遥の質問に、周囲は一斉に大きく頷いた。
細かいことは気にしないと言う、兄弟の父親の視線も熱かった。

「今回の合コンは次男と三男限定なんで、跡取りの心配なんて要らないんだ。美しい遥さん、嫁っこさ、来ておくれ」
「俺ら、金だけは有り余ってるから生活の心配はさせない。高速道路がつくってんで裏山もがっつり売れたし」
「あはは……まじ?困ったな。俺ってば、生まれつき金と贈り物に、超虚弱体質だからな~」
「さ。その弱い身体で、思い切って俺の胸に飛び込んで来て。」
「じゃ、いっそ、まとめて二人して」

昔、どこかで流行った農村ソングの内容そのままに、青年達は恋を語り、遥も望も逃げ場を失って後ずさっていた。
二人で何とか逃亡の算段をしようとしたが、逃げ道は見事な連系プレーで塞がれていた。
農作業で鍛えた鋼の身体に、一分の隙もなかった。
……と、その時。

「望ーーっ!」

農道を一頭(台)の美しい白馬(軽トラ)に乗った王子が、絶体絶命の姫君(限定一人)を救いに現れた。
ひしと抱き合う、恋人達。

「穂(みのる)」
「望(のぞむ)、一緒に幸せになろうな。」
「うん……愛してね」
「てめぇらーーっ!望!穂!裏切者ーーーっ!おまえ等、覚えてろよーーーっ!」

その場に、遥を残し白馬(軽トラ)は砂煙を上げて、姫と王子を乗せて去っていった。
残ったのは真剣に愛を語る、純朴な青年たちと腹を括った遥だけだった。

「遥さん。俺達、本気です。」
「う~ん……じゃ、いっそこの広い田んぼで、青姦でもやりますか?」
「あ……青姦!?」

身体の相性って大切ですよねと、上着を取って艶やかに微笑む美青年に、前を三角に張らした青年達の喉がごくりと鳴った。
野に似合わぬ、薄い白い肌が黄金の稲穂に映えた。

「大胆です、美しい遥さん。遠慮なくいただきます」
「きゃあ~」

見渡す限りの広い田んぼは、超早場米の収穫中で、稲穂の匂いにむせかえりそうだ。

「一度こういうとこで、思いっきり啼いてみたかったんだよね、俺」

ひたすらに稲わらを集め、遥の背中が痛くないように、嬉々として即席のベッドを作る青年に目をやって遥はくすと笑った。

「何か、新鮮」
「ここで眠ったら、星が降るように綺麗なんでしょうね」
「そりゃあ、もう。しし座流星群の空を見せてあげたいです、美しい遥さん」
「ハイジのように、わらの寝床もいいかもしれないな。ハイジとクララとペーターで仲良く星空見上げますか?」

と、言っても今はまだ日は中空にあり。
愛を確かめ合う三人の短い影が、夜を待たずに一つに溶けた。








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