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秋色トレイン 4 

突然……みんな、みんな、わかってしまった。

あのまま、別に暮らしていれば里はほんとうに、幸せになれたかもしれなかったのに。
叔母さんの車を追いかけて、去ってゆく里を捕らえたのはぼく。
里をひどい目にあわせた自分を呪った。

……手放したくなかったのは、ぼくのわがまま。

「ごめんよ、里。ごめんよ……こんなつらい目にあわせて、ごめんよ。」

ぼろぼろと涙が溢れる
「幸せの国ゆき」なんてうそっぱちだ。
里のいない「幸せの国」なんて、どこにもない。

おじさんにぶたれて黄褐色に変色した痣だらけの腕で、ぼくは空しく顔を覆った。

「里……里……」

この切符が本物なら、みんな君にあげる。
ぼくは何もいらない。
だから、ぼくのそばから居なくならないで。
お願い。
もう一度、笑って……里。

噛みしめた嗚咽が、零れた。

「まぁ……この子ったら、ほんとに幸せそうな顔して眠ってるわ。きっと、大好きなお兄ちゃんが側にいるのが、うれしいのね」

その声に、思わず視線をめぐらせた。

「あら、二人とも気が付いたの?すぐに先生を呼びましょうね。」
「ふ……たり……?」

看護師がぱたぱたと廊下をかけて行く。

「里っ?!」

大きな丸い目をこちらに向けて、可愛い里がそこにいた。
ベッドから飛び降りて、点滴を引っ張ったまま駆け寄ったら、ひびの入った唇で微かに里が微笑んだ。

「おにいちゃん……電車で食べたアイスクリーム、おいしかったねぇ……」

ぼくは言葉を失って里を見つめた。

「アイスクリームくれたお姉さんが、ぼくにも切符くれたんだよ。ほら、見て」
「あっ」

手のひらから、里の手の形をした紅い葉が一枚落ちた。


『おにいちゃんゆき』

里の握りしめた切符には、そう書かれていた。






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