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隼と周二 聖なる二人の星月夜 後編 

バンッ!!

外れる勢いで、威勢よくドアが開いた。

「うわ~っ!何だ、馬鹿野郎っ!」
「周二坊っちゃん、大変ですっ!逃げてくださいっ!」
「な、何っ!?」

いきなりドアが蹴破られ、血相を変えた松本がわめいた。(守役の木本は、生徒会長と乳繰り合いの真っ最中なので今日はいない)

「周二坊ちゃん!上空にヘリが飛んでますっ!」
「ヘリって何だ7?」
「パパ沢木が来ますっ!」
「げっ!まじかよ」

あいつ、何、考えてんだ。
……ヘリって。
ゴジラのテーマとヘリの振動音が、周二を地獄の入り口へと誘う。

「隼!早く、服着ろっ!」
「え~……りぼんは……?」
「そのまんま、ぱんつはけっ!追っ手だ!」
「き、きびしいです~」
「逃げるぞ」

パーカーをばふっと被せると、周二は隼の手を取り部屋を抜け出た。
頭上から、皓々とサーチライトが照らされて、逃避行する周二と隼の影が長く伸びた。

バシュッ!
空気を裂いて熱い何かが、頬を掠める。

「うそだろ……?本気で俺を殺る気かよ」

二人抱き合って、ホバリングするヘリコプターが、木々のこずえの葉を散らしながら降下してくるのを見つめた。
巻き上がる風で、逆光の中のシルエットが良く見えない。
降りてきたやつの格好を見て、周二は小さく噴いた。

白いひげ
赤い服
プレゼントの入った大きな袋。

あいつ、馬鹿じゃね~の。

「メリークリスマス!」
「何やってんだ、くそ親父」
「見てわからねぇのか。おまえの目は節穴か。ワタシ、北極からきました。」←一応声色。
「きゃあ~、本物のサンタさんだっ!」

本人曰く、世界中のよい子に愛を届けているんだそうだ。
おまえが届けたいのはたった一人に集中的にだろ、くそ親父。
どうせ、そのでかい袋の中身全部、隼へのプレゼントの山なんだろ。
そいつに近寄るな、隼。

「サンタさんっ!トナカイさんは?」
「えさ代が高いので、今期よりハイテク導入しましたっ」
「サンタさん、すごい~」

違うぞ、隼。
このけったいな仮装親父に目を輝かせるな。
でっかい目でしっかり見ろよ、隼。

あ、薬盛った後、俺が眼鏡はずしたのか……俺の馬鹿。
隼は眼鏡がないと、コンビニ前のポストに挨拶をするくらいぼんやりとしか見えていない。

握手を求めるな、隼。
ハグで返すな、似非サンタ。

「サンタクロースと、一緒に夜景を見よう、少年」
「はい」

浮かれたサンタクロースに、肩を抱かれて去ってゆく、恋人を俺は見つめた。
ちょっと待て。
カップル限定のニュー・プリンセスホテルの、和風別館は?
クリスマスディナーは?
赤いヴェルヴェット・リボンの俺のクリスマス・プレゼントは―――!

「隼――――――っ!!」

サンタクロースが、隼の肩を抱く。
トナカイならぬヘリに乗り込んで、サンタが夜空に高く笑った。

「HO――――・・・HO――・・・・!!」





【おまけ】

それから、数時間後。

周二:「おい。ヘリから狙って、俺を殺す気だったな」
パパ:「馬鹿野郎、エアガンで死ぬかよ。ちょっとしたクリスマス、ジョークだろ」
周二:「いや、絶対本気だった。あと少しそれたら直撃してたし、頭狙ってた」
パパ:「ちっ、ばれてたか。いっそ当たれば良かったのに」

隼:「゚・。(。/□\。)。周二くん、大変です~、ホテルのクリスマス・ディナーの時間が過ぎてしまいました~」
周二:「ヘリに乗って夜景なんぞ見にいくからだろっ!」
隼:「だって……サンタさんが誘ってくれたから……断れないじゃない……(´・ω・`) あう~」
周二:「大体な、いい年こいてサンタクロースがいるなんて……」
隼:「゚・。(´;д;`)。・・ぶわっ……サンタさん……」
周二:「(`・ω・´) お、俺は信じてるけどなっ!」
隼:「Σ(*⌒▽⌒*)゚・。 周二くんっ!ぼくも信じてる~! 」

注:隼ちゃんは過保護なパパに溺愛されて、常識がちょっとずれているのです。
ハードな純粋培養かもしれません。
残念ながら、やっぱりただのバカップル~なのかもしれません。

隼:「あっ!周二くん、お月様のとこ……あれ、見て」
周二:「お~……!?本物かよ」

サンタ:「「HO――――、HO――!!」

恋人たちを祝福するように、銀盆のような月に向かって、そりを引くサンタクロースの姿が見えた。
二人は天空を見上げたまま、ぽかんと一点を見つめていた。

サンタ:「メリークリスマス」




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