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波濤を越えて 42 

買い物をしていないので、牛乳とシリアルが別れの食事だった。
粗末な食事を前にして、これが最後の午餐だと思うと情けなくなる。
思わず顔が曇り、涙が溢れそうになったのを、フリッツが見とがめた。

「正樹……何か食べないといけません。無理をさせてしまったから、すごく疲れた顔をしています」
「そうなんだけど……あまり食べたくないんです……フリッツこそ食べて。だけど、もっとちゃんとしたものを、買っておけばよかった……こんな物しかなくてごめんなさい、フリッツ……」
「わたしは世界中を旅してきましたから、なんでも食べられます。屋根があって、可愛い正樹が傍に居て、スプーンがある。とても幸せです」
「フリッツも、田神のように僕を甘やかすんですね」

やっと微笑んだ正樹に、フリッツも安堵したようだ。

「可愛い正樹、わたしが好き?」
「それは……言わないと通じませんか?一晩中、抱き合っていても、僕の気持ちはわかりませんか?」
「確かめたいんです。わたしにはフォースの力はありませんから、言葉にしてください」
「ん~……」

好きという単語で済ませたくはなかった。
正樹は言葉を探しながら、しばらくの間、沈黙していた。
どういえば、気持ちは通じるだろう。
自ら足を踏み出して手に入れた恋人は、心の底まで見えるような澄んだ空色の瞳でじっと見つめている。
フリッツは、綺麗ごとではなく、取り繕わない赤裸々な本心を知りたがっているような気がする。
正樹は観念して、重い口を開いた。

「……僕はフリッツが傍にいると、初めて本当の自分でいられると思ったんです」
「本当の正樹……?それはどんな正樹?」
「説明が難しいです……僕は長い間、周囲に人がいても、ずっと孤独でした。男性しか好きになれないと自覚してからも、なかなか誰かを好きになる勇気が持てませんでした」
「田神さんは?」
「田神は友人です。彼には愛する女性がいますから、彼の手は彼女のものです」
「そうですか」
「分かり合える恋人が欲しくないわけではなかったけれど、人付き合いが苦手なせいで、うまくゆきませんでした。前に話したでしょう?僕の周囲には、これまで田神以外は、僕を根こそぎ奪おうとする人ばかりだったんです。僕を知るよりも先に、強引にすぐに抱こうとする人ばかりでした。そういう愛の形もあるのも知っていますが、そうしたくはありませんでした」

恋するたびに、何度も悲しい目に遭って、諦めてしまったのだろうと、フリッツは理解した。
心をつなぎたくとも、常に体と行為を求められて、正樹はすっかり疲弊してしまったのだ。
フリッツは手を伸ばして、そっと正樹を懐に抱いた。




本日もお読みいただきありがとうございます。
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「こんなものしかなくて、ごめんね」「だいじょぶだよ」

こんなに好きなのに、離れなければならないのが、悲しいね……(´・ω・`)

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