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波濤を越えて 32 

困ると正樹は何も言わなくなってしまう。
もの言いたげな揺れる瞳が、田神とフリッツを交互に見つめていた。

「もういいよ」

ため息交じりに田神が折れた。

「正樹がそれでいいなら、俺はもう何も言わない。だけど、お互いを知るにはできるだけ時間をかけること。些細なことで卑屈にならないで、理解しようと努めること」
「うん」
「返事はいいんだけどなぁ……本気で向き合って、きちんと話をしろよ」
「わかった」
「正樹は、案外頑固だからな。結局、我を通しちまうんだ」
「よろしくお願いします。田神……さん」

フリッツは、まるで父親に交際を申し込みに来た恋人のような挨拶をした。
田神は苦笑しながら、同じように頭を下げた。

「俺は正樹の保護者でも、父親でもありません。ただの友人です」
「でも、正樹は田神さんを特別な友人だと言っていました。正樹の特別は、これからわたしにとっても特別になります」
「俺はもう、保護者から無罪放免というわけかな。正樹が付き合いたい人を初めて紹介してくれたから、ここは一応喜んでおくとするか」

正樹はフリッツと並んでにこにこと笑っていた。
そんな柔らかな笑顔を見るのは初めてのような気がして、田神はわずかに感傷的になった。

「だめだ、俺。娘を嫁にやる父親の気持ちがわかったような気がする」

夜道を照らす月光は、青白く冴え冴えとしていた。
正樹の部屋の明かりが、ふっと落ちて、二人のシルエットが重なったのが見えた。
これまで寂しかった友人の幸福を祈らずにはいられない。

「良かったな、正樹。幸せになれ」

田神の祝福の声は正樹に届いただろうか。
正樹とフリッツの短い時間は、濃密に過ぎてゆく。

*****

古くて立て付けの悪いアパートの一室で、正樹はフリッツの腕の中にいた。
フリッツが外国人だとか、親に理解されないとか……フリッツのものが大きすぎて、正樹の中に挿れるには無理があるとか……考えることは山ほどあったが、今はただ互いの体温を感じているだけで幸せだった。

「正樹……」

薄い布団にくるまったフリッツは、貪るようなキスを降らせる。
何度も何度も、正樹がおずおずと応えるまで時間をかけて根気よくキスをする。
小鳥の羽根が触れるようなフェザーキスから始まって、舌の根元を吸い上げて、正樹が呼吸困難になるような深いキスまで辿り着く頃には、互いに生まれたままの姿になっていた。

「あっ……ん」
「正樹……」

フリッツは本当は、正樹が欲しくてたまらないのだが、思いを遂げるのに躊躇していた。
何しろ正樹が成人男子としては、かなり華奢なので、壊してしまいそうな気がしている。急く心を抑え込んで、唇を落としただけでぴくりと震える敏感な体を、しなるほど強く抱きしめた。




本日もお読みいただきありがとうございます。
もうすぐ別れの予感がするフリッツと正樹。
……つか、フリッツのが大きすぎて、体をつなげないのが事実……?
可哀想にねぇ、フリッツ。

(´;ω;`)ウゥゥ←ちっこそう……|д゚)←作者のせいだけど


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