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小説・約束・33 

「この青い眼は、とうさまに似たの。髪はかあさまに。二つの国が混ざっている子は、誰もいらないの・・・」

「ドイツかイタリアなら、同盟国じゃないか。」

この間、イタリアは全面降伏してしまったが、ドイツはまだ残っていた。
映画館で見た、ニュース映像の中には凛斗のような青い眼も居たはずだった。
そうしたら、隠れ住むこともないのに・・・。

「うん。でもわたしのとうさまは、三国同盟の相手じゃなくて亜米利加の人なんだ。」

「じゃあ、鬼畜米英か・・・同盟国なら、良かったのに。」

良平の持っている知識は、残念ながら学校で刷り込まれたものでしかなかった。

「良平・・・わたしを殺さないの?」

良平は、ちょっとむっとした。

「僕は、誰も殺さないよ。人を救う医者になるんだから。」

「そうだ。いいものを、良平にあげる。」

側に下りてきた、凛斗の顔は血の気がなく真っ白だった。
その眼は、色硝子みたいで綺麗だ。
凛斗は、そこにあった小物入れから何かを出してきて、良平に渡した。

「本当はいつか、とうさまに渡してあげたかったのだけど・・・」

同じ濃い水色の硝子球・・・ビー玉だった。

「・・・そうだ。僕もやるものがあったんだ。」

今頃、思い出して良平はかばんを探った。
竹の皮に包んできたぼた餅は、饅頭のように薄く平らになっていた。

「やっぱり、つぶれちゃったか・・・ちょっとつぶれたけど、大丈夫。ほら、一緒に食べよう。」

「一緒に・・・?」

「うん。凛斗と僕のと、二つあるんだ。」

両手で、大事そうに受け取ってそっと口に運んだ、凛斗。

「・・・おいし・・・」

「ね?おいしいだろ?凛斗はもっと食って栄養つけないと、駄目だ。前に、お父さんが言っていたんだ。胸の病には、とにかく滋養だって。」

凛斗は、にっこりと笑った。
良平は、ああ、この笑顔が見てみたかったんだ、と内心思った。

「凛斗。口の所、あんこがついてる。」

「とって。」

何気なく自然に、顔を寄せた凛斗の頬をぺろりとなめた。

「甘い。」

「うつる・・・」

「そんな簡単に、うつるわけないだろう。バカだな。」

凛斗の悲しい身の上話を聞きたくなくて、話をそらしてしまった良平。
貰ったビー玉を、二つかばんに入れた。
余り、長居をしては家族に怪しまれると思った。
ばれないように早く帰らないと。

「これは綺麗だから貰っておくけど、渡したかったらお父さんには自分で渡せよ。」

「・・・」

「元気になって戦争が終わったら、米国へ会いに行け。」

凛斗はあきらめて、微笑を浮かべた。

「良平は、何とも思わないの?」

「何を?」

「わたしを見て。」

「・・・人間だろ?」

硝子の目が、すっと細くなって滲んだ・・・



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