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波濤を越えて 14 

初心な正樹は、同じキスでも相手によっては嫌じゃないということに、今更のように気が付いたらしい。
田神に何度もキスをねだり、見つめては確認しているようだった。
とうに始業時間を過ぎていたが、二人ともすっかり忘れて抱き合っていた。

「田神……もう一度、キスして……」
「何かもう、正樹となら最後までやってもいいか~って気持ちになる……やばいな」

何度目かのキスを交わし、二人は見つめ合っていた。
はだけたパジャマからのぞく、白い胸の小柱は紅い小さな茱萸(ぐみ)の実のようだ。
肌を触れば、手のひらにしっとりと吸い付いて、田神は柳瀨の執着を理解できるような気がしていた。

「……僕ね、田神にずっと言えなかった秘密があるんだ」

思い切って、正樹は告げた。

「秘密?」
「うん……」
「……もしかすると、女子に興味がないってこと?」
「えっ……」
「内緒にしているみたいだから、触れなかったけど、薄々そうじゃないかなって思ってた」
「知っていたの……?あの……気持ち悪いとか思わなかった?」
「気持ち悪いと思っているなら、キスなんかできないだろ?いつからの付き合いだと思ってるんだ」
「うん」
「俺はたぶん恋愛は女の子とするし、この間、彼女の部屋で童貞も捨てたところだ」
「そうなんだ、おめでと」
「だから、そうじゃなくて。……正樹は大事な親友だし、困っているときは俺は真っ先に手を差し出すつもりだったんだ。本気で守ってやろうと思ってた。昔からだぞ」
「田神……」
「それなのに、こんなズタボロになるまで気づいてやれなかった。ごめんな」

俺が悪かったと言って、田神は頭を下げた。
ううんと顔を振ったら、涙が散った。
田神の胸で安堵して、正樹はひとしきり泣いた。氷の棘が刺さって、凍えていた胸がぽっと温かくなった気がする。

そして、本当に田神は柳瀨のクラスに乗り込み、凛々しく宣言した。

「ちょっといいですか。柳瀨さん」
「なんだ」
「正樹は俺のモノなので、手を引いてください。これ見よがしにあちこちマーキングされて不愉快です。正直、こっちも我慢の限界っす」
「なっ……」

手を出すなと男らしく宣言した田神は、本当に恋人同士なら皆の前で相良とキスをしてみろと言われてもひるまなかった。

「あてられても知りませんよ。おいで、正樹……」
「でも……みんなが」
「証人になってくれるってさ」

田神は衆人環視の中で本気のキスをした。
それは正樹も驚くような長いもので、どよめきの中、柳瀨はいらいらと席を立った。

「ふんっ、もういい。地に堕ちた聖少女を崇拝する気はない。せいぜい大切にすることだな」
「そうします.行くぞ、正樹」
「う……うん」

これ見よがしに、頬を染めた正樹の肩を抱き寄せた田神は、格好良かった。




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