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波濤を越えて 12 

もう聞く必要はなかったが、あえて田神は口にした。

「会長を好きなのか?」
「……あんなやつ、好きじゃない」

正樹は必死にかぶりを振った。

「だったら、好きでもない奴にキスをされて、落ち込んでいると思ってもいいんだな」
「誰でもキスくらいしてるって、言われたよ……本当なの?」
「質問の答えになってないよ、正樹。だけど、確かに大げさだけど、嘘でもないと思うよ。外国へ行けば挨拶みたいなものなんだから、そんな風に悩まなくてもいいんじゃないか」
「田神もあいつと同じようなことを言うんだね。……僕は、誰ともキスなんてしたくない。あんなこと、されたくない……気持ち悪いだけだ……」
「あんなこと……?」
「……」

田神は逡巡すると、座った正樹をそっと玄関マットの上に、寝かせると覆いかぶさった。
そっと綿毛が舞い降りるように、顔を近づけた田神は正樹の唇に触れた。
驚いた正樹は、目を見開いたまま田神を見つめている。
ちゅと音を立てて、もう一度ふわりと小鳥のキスを贈ると、田神は優しく頬に触れた。

「会長にこんな風にされた?」
「……うん」
「正樹はさ、ほかに兄弟もいないし、俺たちと一緒にAVも見たことなかっただろう?誘っても来なかったし」
「うん」
「こういうことをちゃんと教えてやればよかったな。俺が思っているより、正樹は子供で何もしらなかったんだ。あいつが怖かった?」
「ううん。僕は……自分が怖かった……どんどん違う生き物になっていく気がしてた」
「どんな生き物?」
「気持ちの悪い……ぬるぬるしたナメクジのような化け物だよ。目も鼻もない真っ黒な生き物が、じわじわ僕をかじって、いつか取って代わってゆくんだ……田神、僕は半分くらい化け物になっていると思う。毎日、夢を見るんだ……」

頬が濡れていた。

「安心しろ。正樹は正樹のままだ。何も変わらないよ」
「すごく嫌なのに……触られると感じてしまうんだ。振り払いたいのに、呼ばれると断れないんだ……」
「正樹」
「おかしいんだ。僕のセクスは、僕を裏切ってあいつの手の中で勃つんだよ、いっそ、切り落としてしまいたいと思ったよ。でも、怖くて……気持ちがよくて……どうにかなってしまいそうなんだ」
「俺だって、きっとそうなる」
「……本当?」
「生理的にそうなっただけだ。正樹はおかしくない。俺が保証する」

宥める指が、そっと正樹の唇に触れた。
凍り付いた心が、田神の優しさに触れて溶解してゆくようだ。




本日もお読みいただきありがとうございます。
田神は正樹の事を小さな弟のように思っているのでしょうか。
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「そうか、会長が……」「うん。だからね……」
話せてよかったね。(*^▽^*)

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