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波濤を越えて 7 

田神が野球部の練習を終え、正樹を迎えに美術室に寄ったとき、部屋から出てきた柳瀨とすれ違った。

「一年生……?ああ、相良を迎えに来たの?」
「そうですけど……?」
「ちょうどよかった。貧血みたいなんで、誰かを呼びに行こうとしていたんだ」
「正樹……?」
「たまたま通りかかったら、真っ青になってうずくまっていてね。こういう事は、よくあるのかな?」
「田……神……」

血の気をなくした正樹が、のろのろと田神の傍に歩み寄ろうとして、その場に昏倒した。

「正樹っ!?」

***

「正樹!」

何度も名前を呼ばれ、ゆっくりと目を開けた。
最初に目に入ったのは、田神の心配そうな顔と保健室の白いカーテンだった。

「良かった。気が付いたか、正樹」
「僕は……?」
「貧血で倒れたんだよ。生徒会長が美術室へ先生を呼びに行ったら、正樹が具合が悪くなってるって教えてくれたんで、医務室に運んだんだ。いい人だな」
「……あいつが……」
「ああ。もっととっつきにくい人かと思っていたよ。さっきまで心配してそこにいたんだけど……帰ったのかな」
「……帰る」
「ちょっと待てって。急に立ち上がったら、ほらっ」

軽い脳貧血らしく、ふらついた正樹は、田神の腕に受け止められた。

「家に電話して、迎えに来てもらうか?」
「……心配するから、自分で……帰る」
「じゃあ、チャリを回してくるから、ここで待ってろ。職員室に報告したらすぐ来るから、じっとしてろよ。勝手に一人で帰ったりするなよ、いいな」
「ん……」

ぱたぱたと、廊下を走っていく足音が聞こえる。
念押しされて、返事の代わりにそのままぱたりと寝台の上に転がった。
夢かと思ったが、そうではない。
正樹は顔を覆った。
白い医務室に、ひくっと嗚咽が響いた。




本日もお読みいただきありがとうございます。
(´・ω・`)あ~あ、泣いちゃったね。
田神が救いの手を伸ばしてくれるのかな……でも、同級生には荷が重いかな。
困った上級生です……


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