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波濤を越えて 3 

正樹が同性にしか興味を持てないと自覚したのは、思春期前だった。
色気づき始めた同級生が、互いに好きな子を報告しあう放課後、正樹は順番が来ても名前を言えなかった。

「え~っ。まあちゃんってば、好きな奴いねぇの?」
「うん」
「なんで~?結構うちのクラス、可愛い子いるじゃん。利沙ちゃんとか、麻里ちゃんとか、利沙ちゃんとか」
「あ~。お前、自分の好きな子の名の名前、二回言った~」
「大事なことは二回言うんだよ」
「あのね……ぼくは今は絵を描いている方が楽しいから。女の子とつきあうのは大人になってからでいいかなって思ってるんだ……」
「そういえば、毎日絵を描いているもんな。美術の先生にでもなるの?」
「うん。できれば教員免許も取りたい。ぼくね、いつか美術館の学芸員になりたいんだ」
「へぇ。学芸……員……?それって何?」
「わかんね~」

まだ、進路に関しては切実ではない年頃だった。
友人たちは、自分達よりもはるかに小柄で子供っぽく見える正樹に、既になりたい職業があることに驚いていた。

「なれるかどうかわからないけど、美術館とか博物館に勤めている人だよ。資料を管理したり、展示したり、企画したりするんだ」
「将来の夢か」
「いつか叶うといいなって思っているんだ。」
「まあちゃんは頭がいいし努力家だもの、きっとなれるよ。おれはその前に、どこかに受からないとな~」
「うん、田神と正樹は勉強できるけど、俺たちにはそっちの方が問題だな」
「やばいよな~。進学塾のこの間の模試、公立E判定だったんだ。母ちゃんが切れちゃって大変だった」
「おれも。私立に行く金なんて、うちにはないからねって言われた」
「友よ~」

彼らは、正樹を、性に未熟な幼さの残る同級生として、認識していたのかもしれない。恋の話がそれ以上進展しなかったので、正樹はほっとしていた。
元来、色白で線も細く、丈夫な方ではなかった。女の子の中においても違和感のないほど綺麗な少年は、おひさまの似合う同級生の中ではどこか浮いていた。
放課後、静かに一人絵を描く正樹は物憂げで、同世代の女子からは憧憬をこめて遠くから眺められる存在だった。いつの時代も少女たちは、雄の匂いのしない綺麗な王子様をうっとりと見つめる。
誰にも害をなさない、清らかな両性具有の美少年を愛でるように。

正樹の苦悩は、親友の田神も知ることはなかった。
内に秘めた性癖を恥じながら、必死に隠そうとする正樹の正体には、誰も気づいていない。

……あの日が来るまでは。




本日もお読みいただきありがとうございます。(`・ω・´)
ちょっと意味深な感じで終わりました。
正樹は当然のように、作者の好みで綺麗な少年設定なんですが、どういう美少年かというと色々考えてしまいます。
此花は、どこか両性具有のようで、性の匂いを感じさせない球体関節人形みたいな美少年……のビジュアルが好きなのですが、文章だけだと表現が難しいです。
うんと綺麗な子を想像してください。(*^▽^*)←人任せか~い


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