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Caféアヴェク・トワ 君と共に18 


翌日、二人は直の故郷に向かった。

「ほら。あそこに見えるでしょう?」
「あれって……」

墓じゃねぇかと、ひとりごちた。
直の従兄が鬼籍に入っているとは思いもよらず、松本は直が、故郷に住む従兄を紹介するものとばかり思っていたからだ。
風に混じって爽やかな柑橘の香りがする。
ぐるりを墓地が囲む山の中腹に、目指す場所はあった。

「えらい豪勢な墓所だなぁ」
「ご先祖様が、城を預かる家老……?とかだったって聞きました。だから大きな古いお墓があるんです。これ、みんなうちの一族のお墓です」
「時代劇で見たことあるような感じだな」
「ドラマの撮影に使われたことあるらしいですよ」
「へ~……」

としか、言うほかはない。想像をはるかに超える直の実家に関しては、知らない方がいいような気がする松本だった。

「ここです」

相良家一族郎党の大小の墓石が立ち並ぶ中、隅にあるひときわ小さな墓石の前に座ると、直は花を手向けた。

「ただいま。まあちゃん……帰ってきたよ」

他の墓と比べると、各段粗末な墓に、直は愛おしそうに触れた。

「お花もないんだね、まあちゃん。お父さんに遠慮して、おじさん達ちゃんとお祀りしてないのかな。ごめんね、まあちゃん。おれ、もっと早くに来ればよかった」
「直。傷に障るから掃除は俺がやる。指示だけしてくれ」
「水入れの水を変えたら、花を立てて……お線香をつけてください。砂を寄せて……」
「直接?線香立ては……」
「……ないみたいだから」

困ったように告げた直は、その理由をぽつぽつと語り始めた。

「まあちゃんね、とてもつらい恋をしたんです。」
「そうか」
「親戚中に白い目で見られて……誰も味方がいなくて、かわいそうだった。俺はまだ子供だったから、父や叔父さんたちが怒るのも、まあちゃんが泣いている理由もわからなくて……」
「理由はわからねぇが、理解されねぇのは辛えなぁ。ましてや、独りってのはな。旧家じゃ、誰かと付き合うのでも、家の釣合いとか肩書とか色々あるんだろう」
「そうじゃなくて……まあちゃんの好きな人は……小さなころから男の人だったんです……だから、周囲はこぞって猛反対したし、まあちゃんも自分が幸せになれるわけないって諦めていたみたい」
「直の従兄は分家の跡継ぎだったのか?」
「おれと同じ一人っ子でした。だから誰にも言えなくて抱え込んでいたみたいです。……おれはまだ、ほんの子供だったから相談相手にもなれなかったし」
「親の期待も大きかったんだろうな。誰かを好きになっただけで、何も悪いことをしたわけでもないだろうになぁ。生き方を認められないのは、つらいよな。俺にも覚えがある」
「店長にも?」
「ああ。ガキの頃の話だ。母親の再婚相手と上手くいかなくてな。自暴自棄になってやんちゃもしたし、どうなってもいいと思ったんだが、不幸中の幸いというか拾ってくれた親父が、本当の親よりも親みてぇな人だったから、何とかなったんだ。でなきゃ、俺みたいな血の気の多いやつは、とっくに鉄砲玉として使い捨てにされてるかムショ行きだ。良くある話だな」
「家を出るのも勇気ですよね。まあちゃんは、おばさんが丈夫じゃなかったから、家も捨てられなかったみたいです」
「直には、勇気があって良かったな」




本日もお読みいただきありがとうございます。(`・ω・´)
少しずつ二人の距離は縮まってゆく気がします。
男女の恋と違って、もどかしいのはなぜでしょうか……


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