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Caféアヴェク・トワ 君と共に17 

この人を失いたくないと、本気で思う。
直は深い口づけに応えた。
松本が自分にくれる優しさを、もしも『愛』と呼べるなら、どれほど毎日が輝くだろう。
身体が満たされるだけでは物足りず、心まで欲しいと思うのは余りに強欲すぎるだろうか。

「店長は、まあちゃんに少し似てる気がします」
「そうか?どんなやつなんだ?」
「まあちゃんは、店長みたいにいつも俺を支えてくれました。お父さんに叱られて泣いていたら……直には直のいいところがあるんだから泣かなくていい、直は好きなようにしていいんだよって、お父さんにも話をしてくれました。おれが中学の頃の話です」
「へぇ。直は一人っ子だから、兄貴みたいな感じなのか?俺に似ているなんて言ったら、気の毒な気がするぞ」
「そんなこと……店長みたいに、とてもおれに甘いお兄ちゃんでしたよ。直の好きなようにさせてあげてって、言ってくれたんです」
「そうか。それで、親父さんはなんて?」

ふふっと、どこか寂しそうに直は笑った。

「とても、父らしいんですけどね。図星をさされて激昂したそうです。分家が本家に意見するとは、どういうつもりだって、まあちゃんの叔父さんと叔母さんが呼び出されて、親の躾がなってないって叱られてました……おれのせいでみんなが怒られて、辛かったです。おれは口下手で思っていることをうまく言葉にできなくて、本当はお父さんにもお菓子を作りたいんだって伝えたくて……わかって欲しかったのだけど結局は、話せずに家を出てしまったし……」
「なかなかパンチのきいた親父さんみたいだからな。この前は会えなかったけど、いつかは俺もきちんと話をしなきゃなあ」
「おれも、今度こそ逃げないで、おれの好きな人ですってきちんと報告します。そうした方が、まあちゃんも、きっと喜んでくれると思うから」
「男前だな、直」

背後から抱きしめて、松本は寝台に寄り掛かった。

「頼りなく見えるが、直は時々、俺よりも強いな。」
「強くなんてないです……」
「直のこと、俺はまだまだ知らないことばかりだ」
「おれも……」
「もっともっと、話をしような。直……?」

返事の代わりに、すぅ……と、軽い寝息が聞こえる。
直は腕の中で眠っていた。歩き回って疲れたのだろうか。

「寝ちまったのか?そんな恰好のままじゃ風邪ひくぞ」

痛々しい手の包帯に触れないように気を付けて、直を抱き上げると松本はそっと大切に、寝台の上におろした。

「何でこう可愛いかなぁ……堪らねぇな」

柔らかな薄桃色の肉の鞘が、太ももに力なく触れているのを見ると、口に含んで弄りたい欲求にかられる。辛うじて抑え込み、薄い掛布団でそっと身体を覆った。

「馬鹿でごめんな、直。もう二度と、こんな情けねぇ真似はしねぇから」

いつかは直の想いに応えられるような男になろう。そんな松本の秘めた決意も知らず、直は夢の中にいた。
懐かしい優しい従兄が、柔らかい直の髪の毛をなでる。

『直は、そのままでいいんだよ。直は僕とは違うんだ。ね、約束だよ。直は自由に生きて……ね』

「まあちゃん……やだ、まあちゃん。どこにもいかないで……」

眠る直の頬に、透明な雫が転がった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(`・ω・´)
直の口走った「まあちゃん」の正体は、従兄でした。
それにしても、あれだけらぶらぶな二人だと思っていたのに、直くんは身体だけのお付き合いだと思っていたのでしょうか。
愛がなくても、愛し合えると思っていたのかしらねぇ……不憫。

( ノД`)「あれだけ毎日好きだって言ってきたのに、直に届いてねぇってどういうことだよ」



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