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caféアヴェク・トワの住人たち 11 

顔を見合わせて直の祖母と松本は、思わず笑い合った。

「お名前だけは存じ上げておりましたのよ。たまに電話をかけてきても、松本さんがどうしたとか、松本さんがこうしたとか、直がするのはあなたのお話ばかりでしたの。ですから、初めてお会いしましたけど、あなたの事はすぐに「松本さん」だと分かりました。」
「そうだったんですか。」
「数年前に一時、連絡をよこさなくなってしまって、ずいぶん心配しました。様子を見に行きたかったんですけど、ちょうどそのころ、わたくしも体を壊してしまって……。新しいお仕事を始めてからは明るくなって、安心していたのですけど、いきなり休みをもらったとか言って暗い顔で帰ってきたから、何があったのかと気をもんでおりました。あの子は誰に似たのか、何も言わないでみんな抱えてしまう子ですから。」

確かにそうだと思う。

「俺がいたらなくて、ご迷惑をおかけしました。今後は誤解を招かないように、きちんと相良くんと話をしようと思います。相良君は、いつも仕事にまっすぐで一生懸命です。俺は、出来る限り応援したいと思っています。」
「そんな風に言っていただいて、ありがとうございます。不器用な子ですけど、お傍に置いてやってくださいね。」
「こちらこそ、ふつつかものですがよろしくお願いします。相良君を俺にくださ……あわわっ、じゃなかった。お任せください。」
「あら……うふふ。直を貰って下さるの?一人っ子だから、大変よ。面倒くさいおばあちゃんもいましてよ?」
「直が手に入るなら、そのくらい……いえっ。例えばの話で……あ、違うっ。あの……すみません。口が滑りました。俺はまだ半人前で、そんなことを言う立場にありません。」

声が裏返った松本の狼狽に、直の祖母は、ほほ……と、声をあげて笑った。

「生真面目な直が、貴方を慕う訳が分かるような気がします。どうぞ迷わないように、直の道を照らしてやってください。」

直を託された松本は、その場に直立したまま、再び深く頭を下げた。
そうせずにはいられなかった。
母親の居ない直をずっと育ててきて、直のことを誰よりも分かっているだろうこの祖母には、仔細が分からずともきっと感じることがあるのだろう。
自分には縁のない肉親の深い愛情を肌で知り、思わず瞼がじんとした。

「相良くんを、責任持ってお預かりします。これ、遅くなりましたが俺の名刺です。何かあったら、直接電話ください。」
「ありがとうございます。じゃあ、折角ですから赤外線通信でアドレス交換しましょうか?」
「進歩的っすね。直は今もガラケーなのに……おばあちゃんは、スマホですか?」
「あら。おかしいかしら。」
「いえ、かっこいいっす。」

年齢を感じさせない老婦人に、松本は驚きを隠せなかった。素直にメアドを交換させてもらった。

「不躾ですけど……作法を覚えたら、またおいしいお茶を頂きに来てもいいですか?直に菓子を作ってもらって持参します。」。
「そうね。作法なんて構わないから、いつでもいらして。とても楽しかったわ。」
「俺もです。」

やがて、直が少ない荷物を持ってやってきた。

「行ってきます。」
「元気でね、直。」
「おばあちゃんも。」

老婦人に向かって、タクシーの窓から身を乗りだした直は、まるで小さな子供のようにいつまでも手を振っていた。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
やっと帰り道に向かいます。
( ̄▽ ̄) やっとこさだぜ……

直は一人っ子なので、なんでも自分で抱えて解決してしまう子になったのかな~。

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