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caféアヴェク・トワの住人たち 1 

細いカーテンの隙間から差し込む朝日を避けるように、直は寝返りを打った。
くるりと向き直った直の、細い鼻梁に松本はそっと指で触れる。
固く瞑ったカールした長い睫毛が、微かに震えた気がする。
青ざめた額にかかった髪に、ふっと息を吹きかけても、眠り込んだ直は身じろぎもしない。

「ほんと、綺麗な顔してんなぁ。」
「ん……っ。」
「……油断してっと、おおかみさんが襲っちゃうぞ~。」

腕の中に抱きこんだ直の身体を、自分の下に引き込んで、松本は形の良い唇の輪郭を撫でた。
僅かに開いた薄い唇をついばむと、甘い吐息が漏れる。
いつからこれほど愛おしい存在になったのだろう。
これまで誰かと体を合わせたことはあったが、松本がこれほどまでに執着したことはなかった。

恋人の閉じた瞼をなぞっていた松本の指が止まった。
師であった黒崎が渡仏して以来、毎日、夜遅くまでケーキを作る直の目の下には、薄く青いクマができている。

「頑張りすぎだぞ。直。」

何度も額に唇を落としても、身じろぎもしない。
直が疲れているのは、松本にも十分わかっていた。
週に二日、必ず休めるようにシフトを組んでいるのだが、家にいても退屈だからと、仕込みの時から直は荒木の傍にいて手伝っている。
直の作るケーキは、カフェメニューのランチには欠かせないものだった。
とはいえ、殆どサービスで付けているようなもので、洋菓子店の店先に並ぶような手の込んだものを、経費の面からも出すわけにはいかない。
黒崎にレシピを貰って以来、以前のように菓子作りへの情熱が再燃してしまったのだろう。
製菓学校の教科書を引っ張り出して、何度も基本をさらう直は、傍目にもわかるほど一生懸命だった。
味見に付き合って、松本は二キロも太ってしまった。

直の滑らかな胸にある、薄赤い小さな小柱に音を立ててキスをする。
ぷくりと盛り上がって来た尖りを、指の腹で嬲るうち、気づいて薄く目を開けた直が、視界の中に松本を見つけ両手を巻き付けてきた。

「んっ……店長……?もう、あ……さ?」
「夜が明けたばかりだから、まだ寝てろ。」
「……んっ……」

再び、睡魔に誘惑されかけた直が、松本の悪戯に覚醒するのに時間はかからなかった。
吐息のような甘い声が、耳元にささやく。

「店長……そんなこと言いながら、おれを寝かせる気ないでしょう?」

松本は悪びれる風でもなく、いつものように返事をした。

「直が可愛いのが悪い。」




本日もお読みいただきありがとうございます。
松本と直。二人のその後を書きました。
おにゃのこみたいにめそめその直くんだけど、あれから松本とどうなったかな~というお話です。
しばらくお付き合いください。(〃゚∇゚〃)
よろしくお願いします。 此花咲耶

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