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Café アヴェク・トワで恋して22 

ずっと脳裏の片隅にこびりついた、相良の痛々しい顔を忘れ去ることはできない。
自分がどれほど酷い事をしてきたか、忘れるはずもない。
だが、この男の傍にいれば、いつかきっと相良の傷が癒える日が来るのではないか、都合のよい確信にも似たそんな思いが浮かぶ。

「あのさ、俺は今、螺旋を離れて店をやっているんだ。」
「そうですか。螺旋にはいらっしゃらないんですね。……どういったお店ですか?」
「カフェだよ。雇われ店長だ。」
「そうですか。意外というか……少し驚きました。黒服のイメージが強かったので……」
「俺の店はあんたの店のように、スイーツ専門店じゃなくて軽食が主なんだ。直は食後のデザート用にケーキを焼いている。本格的なやつじゃなくて、おまけみたいなもんだ。いつか、あんたがフランスから帰って来たら、その時は覗いてみてくれ。」
「そうですね。いつかそんな時が来ればいいと思います。」
「戻ったらいろいろ教えてやってくれないか。餅は餅屋だろ?俺には菓子は作れないからな。俺は勉強はからきしだが、どうやら生きていく能力ってのには長けてるらしいから、直にはそっちを教えてやるよ。あんたと向き合うのにはまだ時間が必要だろうが、折を見てよろしく言っておいてやる。」
「そんな日が来れば……うれしいですね。相良は、いつか私を許してくれるでしょうか。」
「さあね。分からないが、今がどん底なら、今以上の底はないだろ。後は這い上がるだけだ。直の事はおれがついているから心配するな。」
「すみません。自分だけ楽になってはいけないのでしょうが、あなたと話していると、枷が取れる気がします。あの少しですが、もし良ければ残り物のケーキを持って帰ってください。お礼の代わりです。そして、これは相良に渡してやってください。受け取ってもらえるかどうかわかりませんが、私が奪ったルセットとは別に考えた物です。あ、そうだ……まだ使える材料があるんです。あなたの店で、使ってくれませんか?」

黒崎は、店の奥に残っていた高級なケーキの材料をあれこれ出してきて、松本に持たせた。
大きな紙袋を三つと、ケーキの箱を下げた松本はそのまま直の部屋に向かった。

*****

「どうしたんですか?大荷物ですね。」
「メリークリスマス。」
「サンタさん、今は9月です。12月になったら、来てください。」
「直~、ノリが悪いなぁ。一緒にケーキを食おうと思ったんだよ。」
「その箱に入っているケーキは、食べたくありません。」
「やっぱり気付いたか。」
「忘れるわけないでしょう?何をされたか、店長だって知っているくせに。」

そっぽを向いた直の横を通って、松本は部屋に入った。




本日もお読みいただきありがとうございます。

さて、松本は直にどんな話をするのでしょうか。(`・ω・´)

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