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Café アヴェク・トワで恋して 17 

一方、松本は苛々と靴音を立てて、あてもなく歩いていた。

店が開店して以来、うまくいってたと思っていた人間関係に、いつの間にかひびが入っていたのに気づけなかった自分に腹が立つ。
気を付けていたつもりだったが、浮かれた自分が気付かぬうちに直だけを依怙贔屓して、尾上が不快に思う態度をとっていたのかもしれない。
元々、無我夢中になると一つの事しか見えなくなるタイプだと、自覚している。
だとしたら、罰せられるべきは尾上ではなく、自分ではないか。
振り上げた拳が、自分に向かうと思い、思わず両手で顔をかばった尾上は引きつっていた。
荒木はうまく宥めてくれただろうが、もう少しうまく逃げ道を作ってやればよかった。
直に接するように、なぜ接してやれなかったか。

「大人気なかったな。もう少し、きちんと尾上の話を聞いてやればよかった。直の名前をだされて、つい頭に血が上っちまったんだよな~。つくづくケツの穴の小せぇ男だぜ、俺はよ……」

*****

ふと暖かい光に誘われるようにして入ったカフェで、松本は息をついた。
ショーケースの中には、見ているだけで垂涎の芸術品のようなケーキが並び、カフェと言ってもスイーツ専門店で飲み物も提供するような店のようだった。

「いらっしゃいませ。」

ケーキに似合う、淡い色のエプロンの女性がメニューを持ってきた。
緩くウエーヴさせた栗色の髪と、長いつけまつげ、まるで一昔前のビスクドールのドレスのような制服。
普段そう言ったものに縁のない松本は気後れしそうになる。視線をそらせてメニューに落とした。

「トゥ……ジュール……アンサンブル?どっかで聞いたな……」

メニューの表書きにある店の名を思わず口にして、松本は目をむいた。

「げっ……、黒崎の店か。」
「はい。世界的に有名なフランス菓子のパティシエ、黒崎の店でございます。」
「……まじかよ。」

スタッフは満面の笑顔を向けた。
ふらりと立ち寄った店が、思いがけず直を傷つけた男の店と知り、松本は立ちあがるとショーケースの前に足を運んだ。

「凝った物が多いな。この店の売りっつ~か……あんたが客に食わせたいと思うのはどれだ?」
「はい。どれもおいしいのですが、新作ですとこちらがお勧めです。こちらのマロンのケーキが一番人気となっております。本日はほとんど完売してしまって、申し訳ありません。こちらでお召し上がりになりますか?」
「ああ。それを貰おう。その黒崎さんは、店にいるか?」
「あいにく、黒崎は、明後日フランスに行くことが決まっておりますので、渡欧準備のため少し早めに帰宅いたしました。連絡を取ってみましょうか?」
「いや、いい。大した用じゃない。それと、コーヒーをくれ。うんと苦いやつ。」
「はい。かしこまりました。」

銀の盆を抱えたスタッフは、滑るように奥へと消えた。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

ワードに保存したら、いきなり全部が消えてしまって……Σ( ̄口 ̄*) 
それから復旧する方法を、必死に探しまくりました。
(´;ω;`)ウゥゥ……何とかわかった……

保存はこまめにいたしましょう。(`・ω・´)←こいつが。

(つд・`。)・゚「よ、良かったよぉ……」

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