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Café アヴェク・トワで恋して 15 

松本は厨房に入ると、一人皿を片付けている尾上に声をかけた。

「どうした?あっちで皆と一緒に賄い食わねぇのか?」
「……いえ。……後でいただきます。」

目線を合わせようとしない尾上の、視界にわざと入った松本は正面に立った。

「尾上。いいか?一度は大目に見てやる。だが、そう何度も見逃せるほど、俺は大人じゃないからな。次はないと思え。」
「……何の話ですか……?」
「何の話か、言わなきゃならないか?」

蒼白の尾上は、思わず後ずさった。

「あれはお前のダチだな?」
「……はい。」

観念したように尾上は打ち明けた。
がたがたと小刻みに震える尾上に近寄ると、松本は尾上にだけ聞こえるように小声で告げた。
その声はいつもの松本の声だ。

「直がな、ここのスタッフはみんな優しいとか、温かいとか言うんだよ。どうせ冷蔵庫も自分のせいでこうなったって、自分を責めてるはずだ。いじらしいじゃねぇか……なぁ?」
「……はい。」
「このままここで働くのもいいし、やめるのも自由だ。どうするか、自分でよく考えてみるんだな。」
「はい。」
「今回の事は、お前が独断でやったんだろう?」
「なんで……俺がやったって……わかったんですか?そんなへまはしてない自信があったのに。」
「俺は自分の周りに置く奴の素性は、きちんと調べるようにしている。いつ玉を狙われるかわからない家業に身を置いているから、少しでもリスクは減らしておけっていうのは兄貴の教えでな。」

尾上は自分の考えが甘かったことを自覚した。
おそらく、自分の前にいる男は見た目よりもはるかに抜け目がなく、想像もつかない修羅場をくぐっているのだろう。

「お前の出た高校、地元では結構ヤンチャなやつが多くて有名だよな?」
「はい。」
「暴走族に入っていたやつとか、サツに何度もパクられた奴とか、(893の)予備軍になりそうな奴らの情報は、色々入ってくるんだよ。だからお前の履歴書を見て、すぐに見当はついた。高校の名前に憶えがあったからな。店でお前を採用したのは、大学に入って真面目にやることにしたんなら応援してやろうと思ったんだ。……どうだ?」
「その通りです。」
「で、一つ不思議なんだが、何で、直なんだ?直がお前に何かしたか?」
「何もされてません。そうじゃなくて……直くんがこの店を辞めさせられたら、行くところがなくなるんじゃないかと思ったんです……」
「てめっ……!」

ぽつりと漏らした本音は、松本を瞬時に激昂させるのに十分だった。
それでも振り上げた拳が、尾上に叩きつけられることはなかった。
カウンターにドンと拳を叩きつけた音は、思いのほか厨房に響いて、荒木が顔を出した。

「松本さん?」
「……何でもねぇ。」
「何でもないって、顔じゃねぇだろ?尾上。ちょっと来い。何があったんだ?」

くしゃくしゃの濡れた顔を荒木に向けた尾上は、子供のようにしゃくりあげた。

「店長……迷惑かけて……すみませんでした。」

やっとそれだけを振り絞った尾上は、荒木に事務室へと連れて行かれた。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

尾上のばかちん……(´・ω・`)
この行動の裏には、何が……?

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