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Café アヴェク・トワで恋して 13 

扉のあく音に、直は何気なく顔を向けた。

「いらっしゃいま……あ、店長……」

引きつっていた直の表情が、松本を見てわかりやすくふっと解けた。
反して穏やかな表情だった松本の方が、一人の男が直の手を掴んでいるのを見て、ぴくりと眉根を寄せた。
それでも、まだ物腰は丁寧だった。

「……うちのスタッフが、なにか失礼なことを致しましたか?」

松本が向けた鋭い視線に、男が思わず直の手を放す。
僅かに赤くなっているのを目の端でとらえて、松本が相手を睨みつけた。

「な、何なんだよ、この店は。新しい店ができたって聞いたから、わざに来てやったのにランチが品切れでさ。まだ12時半過ぎだってのに、おかしかねぇか?」
「……おかげさまで、開店以来、大勢の方にお越しいただいております。」
「兄貴が様子を見て来いって言ったから、下見に来たんだが、飯もねぇんじゃまともに報告も出来ねぇぜ。」
「あんたが、この店の店長さんか?」
「そうです。caféアヴェク・トワの店長で、松本と言います。お見知りおきください。」
「お、おうっ。」

わざとらしい口調は、まさに虎の威を借る狐という風で、昔の自分を思い出し思わず松本は口の端で笑った。
粋がるやつらは、借り物の皮を奪ってやれば直ぐに大人しくなると、松本は経験上知っている。

「直。ちょっと早いが昼休憩だ。店閉めて来い。どうせ、ほかの客は帰っちまって誰もいないだろ?」
「はい。」
「さてと。これって、れっきとした営業妨害だよなぁ……」

松本は直に向けた顔とはまるで別物の、能面のような冷たい顔を向けた。

「聞かせてもらいましょうか。ここへ遊びに行けと言った、あなた方の兄貴ってのはどなたさんで?」
「名前聞いて、びびんなよ。寺沢組の若頭、増本さんだ。」
「あぁ~。増本か。」
「てめぇっ。増本さんを呼び捨てたぁ、どういうつもりだよ。」
「舐めるんじゃないぞ。事と次第によっちゃ、ただじゃおかねぇぞ。」

男たちは気色ばんだ。

「いきり立つなよ、ガキが。舐めちゃいねぇ。知り合いってだけだ。」
「は?知り合い?……どういうことだよ。」
「教えてやるよ。」

松本は軽く手を上げて男を制すると、どこかに電話を掛けた。

「ああ……俺だ。今、ここにお前の知り合いってのが、数人来てるんだ。開店祝いはすでに貰ったし、どういう要件かな……と思ってな。……いや、大したことはない。うちのパテェシエの手首が痣になった程度だ。何か行き違いってやつがあったんじゃないかと思ってな。親父を通したら大事になるから、直接聞いておこうかと思ってな……ああ、代わろうか?おい、浅田ってやついるか?」
「はい。自分です。」

突然神妙になったリーダー格らしい男が、恭しく電話を受け取った。

「増本さん、浅田で……」
『馬鹿野郎っ!てめえら、松本さんの店で何をやったんだ。』
「あ……あの?増本さん……?」
『お前らがゴロ巻いてる店は、俺が足を向けて寝られねぇくらい世話になった人の店だぞ。』
「ひえっ。まじっすか。」
『嘘なんぞ言ってどうするよ。やらかしたことは仕方ねぇが、今すぐ頭下げて許しをもらって来い。許してもらえなかったら、二度と俺の前に面を出すな。わかったな!俺の面に泥を塗りやがって、事と次第によっちゃエンコぐらいじゃすまねぇ、破門すんぞ。』
「え!?……す、すみませんっ!増本さんっ!すみませんっ!俺ら、お知り合いとは知らなかったんす!」

周囲にまで聞こえる怒号が電話口から漏れ聞こえてきて、松本はくすりと笑った。
男はその場で電話口に向かって必死に平身低頭し、ほかの二人も青ざめて顔を見合わせた。




本日もお読みいただきありがとうございます。

松本の面目躍如といったところでしょうか。

(〃゚∇゚〃) 「店長~♡」←きっと、スタッフみんなこんな顔。
(`・ω・´) 「心配するな。」

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