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紅蓮の虹・16 

これは、流れてきたコウゲイの記憶だ。

まるで映画のワンシーンのようにフラッシュバックして、記憶が徐々に自分のものになって行く。

爺さんが掲げた古めかしい旗印は、広いテントの中で色鮮やかにはためいていた。

山田右衛門作と言う絵師が、四郎のために描いたものだった。

この島原の平城で戦う人々が、死して後はこぞって天国(ハライソ)にいけますようにとの願いが込められているそうだ。

益田フランシスコ四郎と言う少年が、後に「天草四郎」と呼ばれるらしい。

コウゲイがかばいきれずに命を落とした「四郎」らしかった。

貧しい野良にはまれな、白鷺のような風情で、一際目立つ四郎は人々の中に降り立った神の使いだった。

白い綸子の振袖に、色刺繍でとりどりの花々を描き、南蛮風の衿飾りを付けている。

なめらかな絹の肌は、まるで少女のようだった。


まだ前髪を落としていない若衆は、言葉を悪く言えば女の容姿そのままの男装のようにも見えた。

神のお告げ通り、民衆の期待通りに生まれた聡明で美しい少年。

今のコウゲイの目に映る四郎は、悲しい生け贄でしかなかった・・・
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