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小説・約束・17 

辺りは、田舎ということもあって、街灯が少なくとても暗かった。
ただ、月明かりに浮かぶ森の影は、夜目にはっきりとわかる。
その付近に、ちらちらと小さな灯が瞬いているのは、どうやら勝次の言うとおりだった。

「へぇ・・・」

良平は、物怖じしない子供だった。
狐狸妖怪の類は、恐怖心が作り出すものだと思っていたし、当時の少年雑誌の冒険譚がだい好きだった。
彼等は南海の孤島で、怪人達と戦うのだ。
一人、不安は有ったが興味の方が勝ってしまって、とうとう様子だけ見に行くことにした。

「何かあれば、帰ればいいんだし・・・」

と、誰に言うでもなく独りごちる。
何より足には自信があったが、思ったより距離の有るのに閉口した。
行けども行けども、逃げるように灯は遠い。

「やっぱり、勝次と一緒に来たほうがよかったかな・・・」

胸まで茂る、夏草を掻き分けて灯を一心に目指した。
小さな灯と、月の光に照らされて、そこにあるのは思ったよりも大きな洋館だと判る。

「あ、痛っ・・・」

鈍痛が、手のひらに起きた。
触ってみたら、どうやら周囲に取り囲むように鉄条網が有ったらしく、甲をなめたら鉄の味がした。
暗がりでどうやら、門扉らしいのに見当をつけて引いてみた。

ギィ・・・と、軋む音・・・

足元では、ゆっくりと歩を進めるたびに、ぱりぱりと枯れた小枝が折れる音がする。
困ったことに、良平の好奇心ははちきれんばかりで、恐怖よりもこういうときはワクワクしてしまうのだ。
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