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小説・約束・16 

時間を気にした良平は、うっかりと自室に履物を持ってくるのを忘れていた。
灯の消えた、お勝手口からそうっと忍び込むようにして、下駄を探した。
別に裸足でも平気だったが、森にはヒルがたくさんいて吸い付くので、何か履いていたほうがいいと勝次がいうのだ。

「良平、ロウソクとかある?」

「仏間に入るのは、ちょっと無理だな・・・あ、大丈夫。停電したとき使ったでっかいのがあるよ。」

秘密というのは、どうしてこうもわくわくするのだろう。
静まった屋敷を抜け出して、半鐘台の外灯を目指した。
苦労して抜け出したものの、勝次はまだ来ない。

「まさか、幽霊が怖くて逃げちゃったかな、あいつ・・・」

遠くから、足音が聞こえないかと伺ってみたが、勝次の足音はしなかった。
きっと、怖くなって逃げたんだ。
良平は、くすりと笑った。
実はその頃、勝次の家では母親が産気づいて、大騒ぎしていたのだが良平には知る由も無かった。
しばらく待っていたが、来そうにないので帰ろうと思った時、噂の森の裏の洋館に灯が点いたような気がした。

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