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終(つい)の花 58 

何故、会津はこれほどまでに無謀な戦いを回避しなかったのか。
武士としての体面も確かにあったが、むしろ当初は降伏恭順の道を探り続けたが、成功しなかったというべきだろう。
新政府軍、特に長州藩は、明らかに会津に深い憎しみをもって接していた。
容保は会津を守るために自分一人で罪をかぶり首を差し出しそうと、嘆願書まで書いたが受理されなかった。
元よりそれは、誇り高い藩士たちが許すはずもなかった。

会津藩に残されたのは、朝敵、逆賊といういわれのない汚名を晴らす道だけだった。
降りかかった国辱をそそぐには、どれほど不本意でも仕掛けられた戦から逃げるわけにはいかない。
それまで散々尽くしてきた幕府の為でもなく、徳川宗家の為でもなく、最後に会津は会津の誇りを守るためだけに戦う道を選んだ。
藩兵たちは容保と思いを一つにし、最後の一兵になるまで戦う覚悟を決めていた。

*****

すべての道が閉ざされたかに見えたが、東北は追い詰められた会津を孤立無援にしなかった。

会津を壊滅させるため、世良修蔵という粗野な長州藩士が、連れてきた愚連隊のような配下と共に東北各藩に無礼の限りを尽くした時、律義な全東北は、苦しむ会津に救いの手を伸ばす。

東北諸藩は会津を救うため、新政府の不義、会津の正義を世良に訴えた。
元々、会津には責められる理由が存在しない。
朝廷と幕府に、ひたすら忠誠を尽くしただけである。
罪もない会津が責められるなら、東北諸藩も同じような目に遭うのではないかという危惧もあった。
東北諸藩は新政府にたてつく気はなく、仙台藩と米沢藩が会津に降伏を勧めるとし、会津も戦になるよりはと意見を入れたが、世良はその斡旋すらまともに取り合おうとしなかった。
度重なる会津の嘆願を下参謀の世良は取り上げることなく一蹴している。

彼は長州藩の下級士族だった。
本来ならば、このような大役につくような男ではなかった。人材が足りず、お鉢が回ってきた形だった。
その為、功を焦っていたところもある。
米沢、仙台の両藩は、速やかに会津に攻め入れと世良に何度も督促を受けたのを、のらりくらりとかわした。
世良が苛立って新政府に送った密書には、「東北皆敵」と書かれていた。
武士ならば他人の「密書」を盗み見するような無様な真似は決してしない。
しかし、世良の横柄な態度は度を越し、決して武士とは認められなかった。

「おのれ、世良……!目にもの見せてくれる。」

密書を盗み見た仙台藩士は、文を握りしめ、会津藩士の前で憤った。

「これが、世良の密書でござる。」
「文を盗み見るのは道義にもとるが……」
「われらは、腹を決めてござる。ご覧あれ。奴らは会津を赦す気など毛頭ござらぬ。」

密書を広げた会津藩士は、言葉をなくした。

「これは……!」

皆、怒りに震えていた。
なぜ、この愚劣な男の言いなりになって、東北人が罪もない東北人を討たねばならないのか。
なぜ、東北人すべてが日本中の敵なのか。
たかが長州藩の一役人に、大藩の藩主が、なぜ生きるに能わずとまで蔑まれねばならないのか。
会津を討てと、何度も催促をする世良の不遜な態度に、ついに仙台藩士が暗殺を決意する。
世良の送った密書はなかったことにされた。

*****

世良は汚わいを踏んだ草履で、東北人の真心を踏みつけにし続けた報いを受けた。
酒を浴びるように飲み、遊び女の着物を羽織り、乳をまさぐりながら眠りについていた世良を、手筈通り仙台藩士が急襲する。
世良の愛刀は、遊び女がこっそり持ち出して、そこにはなかった。
このことだけでも、世良がどのような人物か推察できる。
夜襲をかけられて驚愕した世良は、二階から飛び降りた勢い余って、庭石で頭を強打し、ほとんど意識のないまま首を討たれている。

「似合いの最期だ。」

かくして、奥羽25藩、加えて越後6藩を含めた奥羽越列藩同盟が成立した。
強いて言うなら、密書を握り潰し新政府の役人を手にかけた時、東北全藩が後戻りのできない海原へ船を出したようなものだった。
輪王寺宮を新しい帝としてお迎えし、奥羽越列藩同盟の盟主就任を承諾する。帝さえいれば、朝敵になることはない。

しかし全てを成すには、余りに遅すぎた。
叶わぬ夢は夢のまま、奥羽越列藩同盟はわずかの間に瓦解した。




世良という男に関しては、とても粗暴で野卑な最低の男というイメージを持っていました。
でも、長州藩にいるときは、身分は低くても努力家で勉強を欠かさなかった……という話もあります。
身分にそぐわぬ大役を得て、自分をより大きく見せようと強がっていたのかもしれません。
謙虚で我慢強い東北の人たちには、新政府の役人としての世良の態度は、どこか奇異に映った気がします。
……|(つд・`。)・゚「嫌いだ、あんなやつ。」←このちん本音。

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明日もお付き合いくださるとうれしいです。  此花咲耶

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