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漂泊の青い玻璃 66 

出立当日、つまり事件の起こる少し前、尊は荷物を車に積んで、琉生の所を訪ねていた。

「しばらく会えなくなるけど、長い休みには帰ってくるつもりだから、連絡する。ちゃんと飯を食えよ、琉生。」
「だいじょうぶ。もう飯は食ったかって、毎日電話してこなくていいからね。ちゃんとするよ。それとね、まだわからないけど、隼人兄ちゃんが選手寮を出ようかなって言ってた。尊兄ちゃんは、お仕事がんばって。」
「そうか。さすがにしょっちゅう帰るわけにはいかないから、琉生の顔を見るのは当分スカイプで我慢するとしよう。」
「やっと、尊兄ちゃんの番が来たって感じだね。いつも、ぼくの事ばっかり心配してくれて、自分の事は後回しになっていたから。」
「そういう時期だったんだよ。さ、そろそろ行くかな。」

琉生は伸ばされた手に、きゅっと自分の指を絡めた。

「琉生?」
「あのね。ぼくがアメリカなんて行かないでって言ったら、行かない?」
「そうだな。……琉生が本気で言うなら行かない。ずっと傍に居る。」
「うふふ……尊兄ちゃんはぼくがどういえば喜ぶか知ってるね。言ってみただけだよ。行ってらっしゃい、気を付けてね。」
「琉生、僕を試したのか?」
「うん。でもね、離れてももう寂しくないから心配しないで。ちゃんと前を向いて歩いてゆく。」
「大人になったな。」

繰り返される別れのキスは、少しずつ深くなってゆく。
抱きしめた尊の指が背中を這い、前方に滑って来る。
琉生の緩いジャージの中に忍び込んで、そっと柔らかいセクスの容をなぞった。
くんと琉生の持ち物が芯を持ち、頭をもたげる。

「だ、だめ……っ。お終い。ぼくも支度して、バイトに行かなきゃ。」

ぐっと尊の肩を押しやった琉生は、明るい笑顔だった。

「ぼくはいっぱい絵をかくんだ。どっちが頑張るか、競争だよ。」
「そうだな。またな、琉生。」

別れの挨拶の後、靴を履く尊の背中に琉生はしがみつきたかったが、我慢した。
満面の笑顔で、旅立つ兄を見送ると決めていた。

「向こうに着いたら連絡する。」
「ん。待ってるからね。」

*****

尊は車に乗り込んだ。
ミラーに映る琉生は、いつまでも手を振っていて、駆け戻りたい衝動にかられる。
視線を前に戻したとき、それは偶然視界に入ってきた。

何度も通った道の反対側にハンドルを切った時、高架橋から降りてくる寺川の姿を見てしまったのだ。
しばらく会っていなくても、はっきり父だとわかった。
痩せた頬と、一目で尋常ではないとわかる双眸を認め思わず息を飲んだ。すっかり父の人相は変っていた。
すれ違った女性が異様な風貌に驚いて、脇へよけるのが見えた。

「親父……!」

尊の焦りをあざ笑うように、尊が出てきた通りに向かい、寺川は真っ直ぐに歩を進めていた。琉生の住むアパートに向かおうとしているのは確かだった。
だが一方通行の道路は混んでいて、気にする尊には車線変更は容易ではない。

大した時間は経っていなかっただろうが、気が急いた尊には数時間にも感じられた。
急がなければ……琉生が危ない。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

Σ( ̄口 ̄*) 「はっ!親父!?」
 ( -ω-)y─┛~~~~「来ちゃった……♡みたいな。」

\(゜ロ\)(/ロ゜)/ 「逃げろ!琉生!」
ε=(ノ゚Д゚)ノ 「きゃあ~」

とうとう、最後の嵐がやってきました。


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