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漂泊の青い玻璃 63 

束の間の幸福な大切な時間。
大好きな兄達に思いが通じた気がして、琉生は何か言おうとしたが、気持ちを表す言葉は出てこなかった。
兄達とどんな夜を過ごしたか、改めて言われて思い出すと、まだだるい身体の芯が熱を持つ。
言葉を探して、琉生の口がぱくぱくと物言いたげに動く。

「どうした?琉生?金魚になってる。やっぱり、どっか痛い?」
「……ううん。」
「兄貴が無理させたからだな?そう言ってやれ。」
「そうなのか、琉生……?」

心配そうに、尊が覗き込む。

「じゃあ、隼人兄ちゃんが、咬みついたここが痛い。」
「ちび琉生は、俺にはそういう可愛くないことを言うかな~。」

うふふ……と笑った琉生を風呂場に連れ込むと、隼人はざぶりと湯をかけ、濡れた身体をそのまま抱きしめた。

「隼人兄ちゃん。濡れるよ……?」
「今は離れて暮らしているけど、いつかまた一緒に暮せるようになる。待ってろよ。」
「ん……」
「信じろよ?俺も兄貴も琉生が一番大事なんだから。」
「……あ。」
「ん?」

ふと、視線を落とした琉生は自分の腹に黒い線を見つけた。

「これ、ぞうさんの耳……?」
「い……や。描こうとしたんだけど、琉生が寝返りしたから途中かな~……?」
「ばかっ!隼人兄ちゃんのばかっ!うわ~ん……」

バンと派手な音を立てて、尊が飛んで来た。

「隼人!琉生を泣かすな。何を言ったんだ。おいで、琉生。」
「隼人兄ちゃんが、ぼくのおなかに……」
「ぷっ……ああ、そうだな。もう、子供のぞうさんじゃないね。琉生は大人になった。」
「そうそう。育つのが遅いんで心配したけど、ちゃんと毛が生えて良かっ……痛っ。」

尊の拳が、余計な事を言うなと頭上でさく裂した。

「尊兄ちゃん……ふぁっ……」

ついと顎を持ち上げた琉生に、尊がキスをする。
小鳥が舞い降りて花の蜜を啄ばむように、何度も落される優しいキスだった。
蕩けた琉生は手を伸ばし、せがむように首にかきついた。
やがて、大きな手で両頬を挟むと尊は切り出した。

「いいか?大切な話が有るんだ、琉生。」
「それって、仕事の話?」
「感が良いな。そうだよ。もう少ししたら、僕はしばらくアメリカに行く。本当は、琉生も連れて行きたいんだけど、仕事で行くから家族の同伴は僕だけの考えじゃいかなくてね。」
「ずっと、行ったままになる……?帰ってこれないの?」
「いや、そんなことはないよ。行ってしまえば、会社と教授の都合としか言いようがないけど、長い休暇には帰ってこれる。でも、たぶん年単位の長逗留になると思う。新薬の開発には時間がかかるんだ。」
「そっか……。やっぱり尊兄ちゃんはすごいな。」
「すごいのは教授で、僕はただの補佐だよ。でも、いつかは関わってみたいと思っていた仕事なんだ。こんな若造に、出る幕は無いと思っていたんだけど、幸いなことに教授が指名してくれて、手伝えることになった。正直言うと、うれしかった。やりがいのある仕事だからね。」
「心配しなくても、大丈夫。がんばるよ。離れていても平気……一人暮らしだって、少しずつ慣らしてくれたんでしょう?ぼく、自分がすごく甘やかして貰ってるの知ってる……」
「琉生……本当は傍に居て、もっともっと甘やかしてやりたいよ。」
「尊兄ちゃん……」

見つめる隼人に気付いた尊は、琉生をつついた。

「ほら、大人げない隼人が仲間に入れなくて睨んでる。琉生には隼人がいるからな。」
「兄貴がアメリカに行ったら、琉生を独り占めしてやるから。べた甘の写真送り付けてやるからな。」
「そんなこと言ったって、隼人兄ちゃんだって、忙しいくせに。」
「ネットもあるし、テレビ電話もある。話そうと思えば、いつだって話せるさ。」
「ん……」

琉生は、トイレに行く……と言って尊から離れた。

「泣きに行ったかな。」
「たぶんな。渡米の話は、突然すぎたか。」
「そりゃ、そうだろ。俺だって昨日聞かされて、驚いたよ。出て来たら、きっと目が赤くなってるはずだけど、追求するなよ。」
「ああ。」

*****

二人は揃って部屋を出て、自分の居場所に向かう。
隼人は選手寮へ帰ってゆく。
尊は製薬会社に近い、自分の部屋へ。
手を振る琉生は、互いの道は違っていても、絆はいつもつながっていると感じていた。

「またね。」
「ああ、また。」

幾度となく繰り返された同じ言葉の意味が、三人の中で深くなっていた。

そして、尊が全ての支度を終えて、渡米する日。

……父が死んだ。




本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

二人のお兄ちゃんは、タイプが違うので書いていて楽しいです。(*⌒▽⌒*)♪
選べないよね~[壁]ω・) 「うん……」


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2 Comments

此花咲耶  

nichika さま

> 昨晩は濃い~のを此花ちんが放った~ あら、やっぱり出来る方なんですwww←今更(笑)

(〃^∇^)ノ「どうも。できる子にこのちんでっす~。」■━⊂( ・∀・) 彡 ガッ☆`Д´)ノ
>
> そんな甘々な後に、ついに父が。 サスペンス編へ進む。
> うー武田鉄矢ばりのおっさん刑事が出番かしら。
> 誰もしょっ引かれ無い事を祈る。

いけないことかもしれないですけど、できればそうしたいです。
おっさん刑事は人情が分かる人かな~、どうかな~ ( -ω-)y─┛~~~~ふ~む。

はぴえんになりますように。
コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)


2014/08/23 (Sat) 23:28 | REPLY |   

nichika  

わお===

昨晩は濃い~のを此花ちんが放った~ あら、やっぱり出来る方なんですwww←今更(笑)

そんな甘々な後に、ついに父が。 サスペンス編へ進む。
うー武田鉄矢ばりのおっさん刑事が出番かしら。
誰もしょっ引かれ無い事を祈る。

2014/08/22 (Fri) 23:52 | EDIT | REPLY |   

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