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小説・約束・7 

良平の祖父は、明治天皇の近衛兵だったというのが自慢の、眼光鋭い大柄な男だった。
祖父とはまるで似ていなかったが、良平からは父に似た血統のよさが感じられた。
最初遠巻きに眺めていた小作人のせがれ達の中に、あっという間に馴染んだ良平の性格は、紛れもなく父譲りだった。
無防備といえるほど天真爛漫で、誰とでもすぐに仲良くなってしまう。
格好は浮いていたが、良平はすぐに自然に混じってしまった。
田舎の子供等は、学校に行くときとよそ行きにだけ、足中草履という足裏半分のわらじを履いていたが普段はたいてい裸足で過ごしていた。
その中に混じって、良平の綺麗な白いズックは目立っていた。
だがいつしか、友人のついて回る小さな妹が草で足を切ったとき、その子に履かせてしまって素足になった。
恐縮した親が、おずおずと返しに来たときに

「それはもう、履かないからいらないんだ。」

「その代わりに、僕に足中の作り方を教えてください。」

と、頼み込んで皆と同じように足中草履で走りまわることになった。

「余計な仕事を増やして申し訳ないが、教えてやってくれ。」

良平の祖父に頼まれて、ぴかぴかのズックは少女の宝物になった。

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