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小説・約束・6 

やっと追いついてきた田舎の友人に、佐藤君と呼ばれた少年は振り返った。

「徒競争なら、負けないよ。」

「僕、西東京で3位だったんだから。」

屈託なく笑顔を向けた東京の少年は、この辺りの大地主の家に疎開してきていた。

「東京もんのくせに、がいに走るの速いな、佐藤君。」

絶対負けない自信を持って勝負を挑んだ勝次が、息を切らしていた。
東京と違って今だ空襲のない四国の片田舎は、平和な別天地のようだった。
越してきたばかりの佐藤良平は、最初の2,3日こそ大人しかったが、いつの間にか小作人のせがれ達のなかに溶け込み、すっかり仲良くなっていた。

「良平君と、俺らじゃ食べるものが違ってるんだもの、勝負にならないよ。」

ふくれっつらをしたのは、同じ年の小林勝次。
確かに、そう思うのも無理はなかった。
良平はこの村に来たとき、カバーのついた学生帽をかぶり、糊の利いた眩しい白いシャツに、半ズボンに靴下、黒い革靴という田舎の子供には目映いばかりの格好だったのだ。
この一帯では彼の父方の祖父は、佐藤の殿様と呼ばれている。
そして良平の父は、佐藤の家の跡取りで東京で小さいながらも病院を持っていた。

「勝次はさ、何も知らないからそんなこというんだ。」

「うちの、おじいさまったらさ、田舎に来たら銀シャリ食わせてくれるのかと思ったら、働きのないものは麦飯を食えっていうんだよ。」

勝次は目を丸くした。

「え?そうなの?」

「昨日なんか、やった~、白いご飯だと思ったら大根飯だったよ・・・あ~、白いご飯をおなかいっぱい食べたいっ!」

地団太を踏んだ良平を見て、側にいた他の子供たちも思わず大声で笑った。
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