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漂泊の青い玻璃 44 

父の精神疾患さえなかったら、琉生がこんな風に自分を責めることなどなかったのにと、尊は思う。

「本当は僕も琉生一人をアパートに放り込むなんてこと、したくは無かったんだ。だけど話をしても、親父が自分を病気だと認めない以上、入院させるのは難しくてね。琉生の為にも、今は離れて暮らすのが一番いいことなんだ。」
「お父さんが一人ぼっちで可哀想だなんて思うなよ、琉生。琉生がどれだけ我慢してきたか、僕達はもうみんな知ってるんだからな。琉生にとって、何が一番良いかだけ考えよう。僕も隼人も琉生の味方だからな。」

尊は、目を潤ませた琉生の短くなった髪を、乱暴にくしゃくしゃと混ぜた。

「帰りが遅くても、隼人が毎日覗きに来るし、僕も週末には顔を出す。それでも寂しくなったら、電話しておいで。琉生が会いたいって言うのなら、高速ぶっ飛ばして真夜中でも走って来るから。」
「尊兄ちゃん……」
「あの家は琉生の家だよ。だから、いつかお父さんが元気になったら、前みたいにみんなで一緒に暮そう。だから泣くな、琉生。」
「……ん……わかった。」

尊にだけは素直に心の内を話す琉生の様子を、隼人は複雑な思いで眺めていた。

「さて……と。今度来るときに、着替えを持ってくるとして、取りあえず風呂に入らせてもらおうかな。体操ジャージでいいから貸して、琉生。」
「え?お風呂?隼人兄ちゃん。クラブでシャワーは使って来たんじゃないの?」
「汗は流したけど、俺は湯に浸からないと、疲れがとれねぇタイプなの!」
「こら、隼人。琉生に甘えるな。お前は帰ってから、風呂に入れ。琉生の仕事が増える。」
「やだ。俺は今日はここに泊まって、琉生と背中の流しっこするんだからな。兄貴こそ、ポンコツの軽でさっさと下宿に戻れよ。」
「生憎だな。ぱんつの換えも持ってこないお前と違って、僕ははなから準備済みだ。それに、お前みたいな寝相の悪いやつと琉生を一緒に寝かせられるか。筋肉ばかの足が当たって、琉生の骨が折れたらどうするんだ。」
「兄貴、知らないのか?俺の寝相は、ほぼ棺の中のツタンカーメンだぞ。こう腕を組んだまま、朝まで身じろぎもしないんだから心配するな。」

隼人は胸の前で腕を組んだ。

「馬鹿。何がツタンカーメンだ。アンケセナーメンに青い矢車菊を手向けて貰え。」
「琉生~、尊兄ちゃんが、訳のわかんないこと言っていじめる~!」
「あはは……ぼくもわかんない~」
「……どいつもこいつも、ロマンの欠片も無いやつ等だな。」

やっと笑った琉生に、安堵した尊と隼人だった。

「じゃ、俺は家に帰って風呂に入るよ。琉生がケチで、ぱんつ貸してくれないからな。」
「だって隼人兄ちゃんとじゃ、まるでサイズが違うもん。」
「冗談だよ。また、明日な、琉生。」
「うん。隼人兄ちゃんも、気を付けてね。寝坊しないで、朝ご飯ちゃんと食べてね。あの……」
「心配するな。親父は大丈夫だ。織田さんがちゃんと食わせてくれてるさ。」
「家まで送るよ、隼人。」

鍵を取り上げた尊に向かって、大きなスポーツバッグを下げた隼人は、玄関で手を上げた。

「いいよ。兄貴は琉生の傍に居てやって。」
「そうか?」
「ほら、琉生。そんなに心配しなくても、今日は尊兄ちゃんが傍に居てくれるってさ。」

尊のTシャツの裾を掴んで付いてきた琉生に、二人は苦笑した。
一人になるのは、不安でたまらないと顔に書いてある。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
血がつながっていなくても、琉生はお兄ちゃん達としっかり結びついています。


(〃^∇^)o 「あはは。琉生の甘えんぼう。」 ←ちょっとうれしい尊
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「だって……」


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