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漂泊の青い玻璃 25 

琉生は、肩越しに優しい声を聞いた。

「寂しいか、琉生?」
「うん……」

尊が家から居なくなると考えただけで、涙が出そうになる。

「でもね……僕は早く収入のある大人になりたいんだ。どんな時も琉生を守れるようにね。だから、寂しくても少しの間、我慢するんだよ。僕も琉生に会えないのは寂しいけど、しばらくして落ち着いたら、時々は戻って来るから。」
「尊兄ちゃん。ぼく、もう6年生だから大丈夫。我慢する。」

尊の言葉の裏にある思いに、琉生はまだ気づかない。
年の割に幼い琉生は、まだ恋をしたこともなかった。

「琉生は大きくなったよな。初めて会った時は、きゅうこうじゃーが大好きで、僕らの事なんて眼中になかった。サインしてもらったTシャツが小さくなってお母さんが捨てるって言った時、まだ着る~ってわんわん泣いてたのを覚えてるよ。」
「それ、一年生になる前の話だよ。あのTシャツ結局、色も褪せてるからってお母さんは捨てちゃったんだ。ぼく、角まで泣きながらごみ袋を拾いに行ったんだよ。」
「琉生はそんな前の事を、覚えてるのか?」
「うん。尊兄ちゃんと隼人兄ちゃんに会ったのは、生まれて初めて遊園地に行った日だったんだ。帰りにたくさんおもちゃを貰って、すごく嬉しかったから覚えてる。尊兄ちゃんが抱っこしてくれて、レッドが頭を撫でてくれたんだ。嬉しくて胸がどきどきした。」
「そうか。琉生にはいい思い出だったんだな。良かったよ。」
「きゅこうじゃーと敵を倒したんだよ、忘れないよ。」
「ははっ、そうだったな。」
「きゅうこうじゃーブラスターで、こうやって怪人を倒したんだよ。」

琉生は撃つポーズを取って見せた。
そう言う尊も、遊園地での出来事を覚えていた。
ソフトクリームを両手で持ったまま、どうすればいいのか思案顔を向けた琉生の仕草。初めて会った父の再婚相手の連れ子に、尊はその日から庇護欲を掻き立てられっぱなしなのだ。
小さな弟が、可愛くて仕方がない。
それこそ誰にも渡したくないほどに。

「尊兄ちゃん、大学に行ったら一人で住むの?」
「そうだな。大学の近くにアパートを借りるつもりなんだ。多分奨学金がおりるはずだから、親父のすねは余りかじらなくても済むと思う。なるべく自力で頑張ろうと思ってるんだ。」
「お泊りに行ってもいい?」
「勿論いいよ。そういえば、聞いた事なかったな。琉生は大きくなったら何になりたいの?」
「ぼく?あのね……絵を描く人になりたい。まだ誰にも言ってないし、なれないかもしれないけど。夢だよ。」
「琉生の絵はいい絵だものなぁ。お兄ちゃん、琉生の絵温かくて好きだぞ。誕生日に琉生が描いてくれた絵、大切に取ってあるんだ。僕の宝物だ。ただなぁ、美大に行くつもりなら、これから勉強も頑張らないと大変だぞ。絵だけ頑張っても、大学は受からないからな。勿論実技も必要だろうけど。」

琉生は尊の膝から滑り降りた。

「尊兄ちゃん。ぼくね、この間出した全国子供美術大会で、特選貰ったんだよ。絵はまだ当分帰ってこないから見せられないけど、尊兄ちゃんに早く教えたかったんだ。まだお母さんにしか言ってないの。」
「そうか。二番目に教えてくれてうれしいよ。琉生の夢が叶うと良いな。応援するから頑張れよ、琉生。」
「うん、頑張る。」

琉生の夢。
それは早逝した父の夢でもあったと、いつか琉生は知ることになる。




本日もお読みいただきありがとうございます。(`・ω・´)

琉生は離れ離れになるのが、さびしくて仕方がないのです。
きっと尊も……(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚+「帰ってくるから。」「うん……」


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