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漂泊の青い玻璃 20 

隼人は二階に駆け上がると、懸命に書斎の扉を叩いた。

「どうしたんだ。」
「お父さん!大変なんだ!お母さんが、倒れた!お母さんが……」
「美和っ!?」

隼人のただならぬ様子に、驚いて部屋から出てきた寺川は、直ぐに救急車を呼んだ。
意識を失くしたままストレッチャーに乗せられた蒼白の顔に、さすがに隼人は責任を感じ顔をこわばらせていた。
尊にしがみついて泣く琉生の背中に、小さな声で「ごめん。」とつぶやいたが、琉生には聞こえない。

冷静になってみれば、琉生は何も悪くない。
兄の言う通りだった。
勝手に讒言を鵜呑みにして、一人で勝手に傷ついた。
そしてすべての鬱憤を、小さな琉生と優しい義母になすりつけた。

立ちつくした隼人に背を向け、琉生は声を殺して泣いていた。尊の腕の中にすっぽりと収まった琉生はまだ小さく、隼人は自分の愚かさが情けなかった。
琉生と声を掛けても、母を呼んで尊の胸で泣く琉生の背中は、隼人を拒絶していた。

「琉生、ごめん……」
「あぁ~ん……あぁ~ん……」
「ごめん……」

琉生はそのまま、尊の腕の中で泣き寝入った。

*****

病院に運ばれた琉生の母の病気は、奇しくも琉生の亡くなった父と同じ病だった。
大学病院に移り、数日間の検査入院を終えた母の強い希望で、退院を許されたがそれは決して病が癒えたわけではない。
寺川と尊は別室に呼ばれ、残された母の命は琉生が小学校を卒業するまでは持たないだろうと、医師から死の宣告を受けた。

「そんな……!」

寺川は絶句したきり、蒼白になった。

「何らかの自覚症状はあったはずです。おそらく倦怠感や、食欲不振、吐き気は慢性的に続いていたはずです。何故、こうなるまで受診しなかったんです?ご主人やご家族は誰もお気づきにならなかったんですか?」

医師は寺川に問うた。

「わたしは仕事が忙しくて、家の事は妻に全て押し付けていました、わたし達は再婚なので、妻は気を使って自分の体の調子が悪いと言えなかったんだと思います。家事なども毎日変わりなくこなしていました。……気が付きませんでした。」
「相当、無理をされていたと思いますよ。正直言うと、私は奥さんは退院すべきではないと思いますね。開腹して患部の様子を見なければ、はっきりとは言えませんが、猶予はないと思います。一刻も早く患部摘出の手術をすべきです。」
「治療すれば、治りますか?」
「完治の見込みは少ないと思います。ただ、少しでも長く生きるためには入院して加療すべきです。まだお子さんも小さいようですし。」
「出来るだけ早く、妻と相談してお返事させていただきます。」

決して楽観的な状態ではないと知り、話を聞いていた寺川と尊は青ざめて顔を見合わせた。
これまで美和は、そんなそぶりは少しも見せたことが無かった。
隼人は琉生の手をしっかりと握り、診察室の外で待っていた。
しかし、家族の心配を他所に、美和は入院には同意しなかった。笑みさえ湛えて、美和は既に着替えを済ませていた。

「お母さん。出来れば入院した方が良いって、先生が言ってたんだけど……」
「自分の体の事は、自分が一番よくわかるの。尊君はもうすぐ受験だし、隼人君も中学生になるし、琉生も寂しがるわ。それにお父さんは、下着がどこにしまっているか知らないはずよ。ねぇ?うふふっ……」

医師は小さくため息をついた。既に、自分が長くないと悟っているようだ。

「入院した方が良いと思いますがね。」
「すみません、先生。……通院しますので、よろしくお願いします。」

待合室で長い時間待った琉生は、やっと母に逢えた。

「お母さんっ!」
「驚かせてごめんね、琉生。心配させちゃった。」

つないだ隼人の手を振り切って、琉生は母の胸にかきついた。

「おうちに帰りましょう……ね。」
「うん。お母さん、だいじょうぶ?」
「大丈夫。おうちに帰ったら、琉生の魔法かけてね。」
「わかった~。」

琉生と母親しか知らない、痛みを止める魔法の呪文。
「イタイノ イタイノ トンデイケ」
そこに自分が入ってゆく権利はないと、隼人は思った。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

(´・ω・`) お母さんが倒れてしまいました。琉生はどうなるのでしょう……
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「だいじょうぶ、だいじょうぶ。」「うん……」


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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 琉生ママの病気が、琉生パパと同じだなんて…
> そんなぁ~~琉生が あまりにも可哀想じゃないですかぁ~!
> 此の世に 神様は居ないのでしょうか。。。(´;д;`)ウッ

(´-ω-`)世の中にはいろいろなことがたくさんあるのです……
琉生くんも、くじけないでがんばって欲しいものです。(〃▽〃)
>
> そっそうか!
> こんな可哀想な話しを書く作者が、いけないんだ!

( *`ω´) な、なんだとぉ~!
>
> いじめっ子 このちんは、今頃 高笑いしているのでしょうか?

♪ψ(=ФωФ)ψま、まさか~、けいったんさんたら~あ、顔間違えた。

> 苛めっ子健在♪(o ̄∇ ̄o)ウヒョウヒョ、ウヒョヒョ~~∑( ̄◇ ̄:)エッ!?...byebye☆

でも、琉生くんにはもう少し試練の道なのです。(`・ω・´)
(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚+「あ、あんなこと言ってる……」「よしよし。」

コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)
 

2014/06/15 (Sun) 21:07 | REPLY |   

けいったん  

琉生ママの病気が、琉生パパと同じだなんて…
そんなぁ~~琉生が あまりにも可哀想じゃないですかぁ~!
此の世に 神様は居ないのでしょうか。。。(´;д;`)ウッ

そっそうか!
こんな可哀想な話しを書く作者が、いけないんだ!

いじめっ子 このちんは、今頃 高笑いしているのでしょうか?
苛めっ子健在♪(o ̄∇ ̄o)ウヒョウヒョ、ウヒョヒョ~~∑( ̄◇ ̄:)エッ!?...byebye☆ 

2014/06/15 (Sun) 10:13 | REPLY |   

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