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漂泊の青い玻璃 17 

塾から帰って遅い食事を取る長男に、思い詰めた母親は声を掛けた。

「尊君……食事中にごめんなさい。ちょっと話をしてもいいかしら.」
「お母さん?大丈夫だけど……何かあったんですか?」
「実はね……隼人君の様子が、ずっとおかしいの。最近、わたしとも琉生とも話をしてくれないの。身体の具合が悪いわけではないようなのだけど……お父さんは仕事が忙しくて話を聞いてくれなくて。どうしていいか……わからないのよ。きっと何か悩んでいると思うのだけど、わたしには話せないみたい。」

尊は、受験勉強の忙しさにかまけて、琉生と義母に何の気配りもしていなかった自分に気付いた。

「心配かけてすみません。お母さん。学校で何かあったのかもしれないから、僕から隼人に聞いてみます。」
「お願いね……もしかしたらって、思い当たることはあるんだけど……」
「顔色が良くないみたいだけど、お母さんは大丈夫?」
「大丈夫よ。ありがとう……頼りなくて、ごめんなさいね。」

元々細い人だったが、影が薄くなったような気がする。この人は、これほど痩せていただろうか。
もしもやつれた理由が、自分や隼人、父親にあるのなら申し訳ないと尊は思った。

*****

早々に自室に引き上げ、ベッドに転がってテレビを見て居る隼人に、尊は注意深く話を振った。

「隼人。ちょっといいか?話したいことが有るんだ。」
「何?」
「お前さ、明るいだけが取り柄だったのに、最近静かだな?ずいぶん大人しくなったじゃないか。飯を食ったら直ぐに部屋に籠ってしまうようだし。何かあったのか?」
「別に何もない。」
「そうか。お母さんが隼人の様子がおかしいって心配していたんだ。余り、心配かけるようなことはするなよ。」
「心配してくれなんて頼んでない。」
「なんだよ、それ。」
「……あの人は本当の親じゃない。心配なんてしてほしくない。」
「隼人……前はそんな言い方はしなかったじゃないか。それに親父が結婚したいと言った時、隼人は反対しなかっただろう?優しそうな人だし、料理も上手い。お母さんが来てから家の中はいつも掃除も行き届いて清潔だ。琉生の事だって、すごく可愛いって喜んでたじゃないか。最近、遊んでやるのもやめたらしいが、何故だ?何が気に入らないんだ?」

隼人はふてくされた顔を向けた。

「あの時は……結婚する前は、あの女の事を何もわかっていなかったからだ。」
「お母さんの事を、あの女なんて言うな。隼人、どうしたんだ。」
「どうもしない。俺は何も変わってない。兄貴は騙されているんだ。あの女と琉生は、親父に上手く取り入って、俺達の母さんを追い出したんだ。」
「話にならないな。誰に吹きこまれたんだ、でたらめもいいとこだ。」
「兄貴が嘘だと思っているなら、それでもいいよ。でも火の無いところに煙は立たない。俺はもうあいつらを信用しないと決めたんだ。家族だなんて認めない。出て行けばいいと思ってる。」

全てを知る尊は、二の句が告げなかった。一体、いつからこんなことを考えていたのだろう。実の母が出て行った理由は、当時幼かった隼人には伏せていたが、もう言うしかないと思う。

「誰に何を吹き込まれたか知らないけど、ちゃんと真実を見ろよ。」
「真実が見えてないのは兄貴の方だ。俺は今、あの女の事は家政婦としか思ってないからな。」
「隼人!いい加減にしないと、本気で怒るぞ……」

ふと視線を感じた先に、尊は琉生を見つけた。薄く開いた扉の向こうから、心配そうな顔が見えた。

「琉生、おいで。大きな声を出して、ごめん。驚かせたね。」
「尊兄ちゃん……隼人兄ちゃんと喧嘩してるの?」
「違うよ。話をしていただけだ。心配しなくていいからね。あれ?……琉生も少し見ない間に、何だか雰囲気が変わったな。身長が伸びたのかな。」
「琉生くん、二年生だから。」
「琉生!自分の事を琉生くんって言うの、止めろって昨日も言っただろ。いつまでも、ガキみたいで恥ずかしいだろ!ちっとは考えろよ。」
「ご……ごめんなさい。」
「怒鳴るな、隼人。可愛くていいじゃないか。なぁ、琉生?おにいちゃんは、琉生が自分の事を琉生くんっていうの、出会った時から可愛いなぁって思ってるよ。隼人の事なんて気にしないで、琉生の好きなように言えばいいんだよ。琉生は琉生だもんな。」
「尊兄ちゃん……」
「甘やかすな。それでなくてもどんくさくて、俺が学校でいろいろ言われるんだからな。」
「なんで、琉生の事でお前がとやかく言われるんだ?」
「運動会の全校リレーで、こいつも走るだろ。断トツで、遅いんだよ!俺の弟になったんだから、もっと気合入れろよな。」

琉生は涙ぐんだきり、うつむいてしまった。
確かに、上級生にはやされたことが有った。

苛立つ隼人には、尊もとりつくしまがなかった。




本日もお読みいただきいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「 ……隼人兄ちゃんが意地悪になっちゃった……」
どうやら、琉生くんは走るのが遅いみたいです。

「隼人の弟にしちゃどんくせぇのな。」とか言われたみたいです。(´・ω・`) しょぼ~ん……


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