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漂泊の青い玻璃 3 

急ぎ自宅に帰ると、数台の赤色灯が回っていた。
近所の噂雀が門から覗きこみ、家の様子を伺っている。

「あ、この家の子よ。」
「揃って帰って来たわ。」

何か言いたそうなご近所のご婦人方に一瞥をくれたきり、言葉を交わすでもなく二人は玄関に入った。

「兄貴。親父はどうしたんだ?警察と救急車が一緒なんて……酔っぱらって階段からでも落ちたのか?」
「隼人……。父さんが自殺した。俺が救急車を呼んだ。警察にも電話したから、おそらく検死になると思う。今、救急隊員が蘇生処置をするからって、父さんの部屋に入っている。」
「自殺……って。まじかよ。」
「ああ、琉生も一緒に帰って来たのか。お母さんが亡くなってから、父さんがずっとふさぎ込んで鬱状態になっていたのは二人とも知っているだろう?神経の細い人だったから、一人残されたのが耐えられなかったんじゃないかな。」
「だからって、なんで自殺なんて……衝動的に?アルコール依存症って、突発的にそういうこともやるのか?」
「さあ、どうなんだろう。僕には詳しいことはわからない。とにかく後は警察に任せよう。さっき救急隊員に聞いたけど、もう、こと切れてしまってるそうなんだ。今更慌てたって生き返るわけじゃないと思う。一応、心臓マッサージをしているらしいけど。」
「そんな……」

琉生は蒼白になって、息を詰めた。
意外なほど淡々と、尊は父の様子を語った。
仕事部屋のドアノブに、ネクタイを掛けて首を吊ったという父親の遺体を、気丈にも尊がおろしたという。
感傷よりも驚きの方が勝る琉生と隼人だった。

「親父は、お母さんの傍に行きたかったのかな。」

ぽつりと隼人が口にした。

「そうかもしれないな。見て居て分かっただろう?親父にとってお母さんは特別な存在だった。かけがえのない唯一無二の女性だったから、独りで生きてゆくこの先の人生が耐えられなかったんだよ、きっと。親父にとってお母さんは人生の全てだった。ただ、同じ場所に行きたかったんじゃないか。」
「……そこまで愛する人に巡り合えて、ある意味幸せだったのかもな……。」
「……僕は、お父さんの気持ち……何もわかってあげられなかった……」

琉生がほろほろと泣いているのに、尊は気付いた。

「琉生。泣かなくていい。親父がこのまま亡くなったとしても、お前のせいじゃない。」
「でも……もし僕が家を出ないで傍に居たら……お父さんは死ななくて済んだかも……しれない。僕が逃げないで、側でお母さんみたいに優しくしてあげたら……でも、僕は……」
「それは、たらればの話だ。こうなったのは、琉生のせいじゃない。お父さんが弱かっただけだ。自分を責めるな。好きな人が出来たら、琉生にもいつかお父さんの気持ちが分かるさ。」
「尊兄ちゃん……」
「琉生が家を出たからって、誰も責めたりしないよ。俺だって大学に行くときに家を出たんだ。琉生がそうしたかった気持ちもわかる。」
「ちび琉生。そんなに泣くと、目が溶けちまうぞ。」
「う……んっ……っく……」

寺川の父は蘇生のための処置を受けながら、慌ただしく緊急搬送された。尊が同道し、隼人と琉生は車で後を追った。
病院で心肺停止が確認された二日後には検死解剖が行われ、荼毘に付されたのは、一週間も後だった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
消えた父の遺体がなぜか自宅に…… (´-ω-`)ふむ~……


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