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漂泊の青い玻璃 2 

数時間後、ドアを叩く激しい音に、琉生はやっと気付いた。
痛む頭を押さえ、這いながら何とかドアを開けた琉生は、今度はいきなり罵声を浴びせられた。

「てめえっ!琉生っ!いるならさっさと出て来い。何分待たせるんだ。」
「ごめん、ちょっと頭痛くて……」
「で、親父は?」
「……お父さんが、どうしたの?つか、何でここがわかったの……?」
「親父から、動けないからからここへ迎えに来いって、メールが有ったんだよ。何かあったら言って来いと言ってあったのに、一体どうしてたんだ。」

次兄の隼人は琉生を押しやり、部屋に上がり込んだ。

「親父いるんだろ?」
「お父さんは……あっ!」

琉生はその言葉にやっと思いだし、慌てて隼人の後を追う。

「隼人兄ちゃん。お父さんが大変なんだ。何が有ったか分からないけど……僕が帰った時には奥で倒れてて……僕は誰かに殴られて……」
「は~?誰もいねぇぞ。」

部屋を覗き込んだ次兄の隼人は、訝しげな視線を向けた。

「適当な事、言ってんじゃねぇ。いないってことは、親父は帰ったんだろ?おまえ、夢でも見たんじゃないか?」
「そんなはず……」
「この間一度家に帰ったんだ。親父は相変わらず、うるせぇし。……お母さんはもういないって、俺がどう言っても納得しないんだ。」
「だから僕は……家には帰れない。お母さんがいないんだもの、あの家に僕の居場所はないよ……それに、お母さんが亡くなったのだって、お父さんが……」
「親父がおまえのお袋を見捨てたって言いたいんだろう?病院で手遅れだったって言われたものな。それに関しちゃ、俺も気の毒だったって思ってるよ。入院すれば、もっと長生きできたかもしれない。今更言っても、仕方ないけどな。」

琉生には、それ以上何も言えなかった。

記憶はあやふやだったが、後頭部に鈍い痛みは残っていたから、部屋に父がいたのは事実だと思う。
琉生の部屋の寝台で、確かに父は倒れていた。しかし、今その形跡は欠片も残っていない。布団もきちんとたたまれていた。
不思議だったが、父と顔を合わせないで済んだことに琉生はほっとしていた。
もしかすると、本当に夢を見たのだろうか……?

沈黙を破るように、隼人の携帯が鳴った。

「……ああ、俺。今?琉生の部屋だけど。ああ……分かった。」

「琉生。やっぱり親父に何かあったみたいだ。兄貴が琉生もいるなら二人で帰って来いって言っている。」
「尊兄さんが……。」

急いで上着を手にした琉生を見て、隼人は思わず笑顔になった。

「ちび琉生。俺の言う事は聞けなくても、兄貴の言う事は聞くんだな。兄貴が一番か?」

わざとぶっきらぼうに言うのは、隼人の常だ。
琉生は決められないもんと笑って、かかとの潰れたスニーカーを履いた。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
琉生には、二人のお兄ちゃんがいるのです。



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