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朔良―そのままの君でいい 3 

理学療法士になると決めてから、朔良は主治医に連絡を取り、会いに出かけた。
そこには島本が働いていたが、別段気にも留めていない。

「先生。お久しぶりです。」
「朔良君。元気そうだね。」
「小橋先生が、連絡してくださっていると思うんですが……相談に乗って欲しいんです。」
「ああ、進路のことだね。聞いているよ。資料を揃えておいたから、持って帰っておうちの方とも検討してみると良い。もう親御さんの了解は貰ったのかな?」
「はい。先生も良くご存じだと思うのですが、両親は僕にとても甘いので……」
「ははっ、知っているよ。朔良君は、愛されているからね。」

朔良は答えず、静かに微笑みを浮かべた。
古い知り合いの主治医との会話は、小橋といる時のように心地よかった。
朔良と主治医との付き合いは長い。

物心がついたころには、すでに彼は朔良の担当医だった。
不幸な事件の事も含めて、朔良の事は全て知っている。
主治医もまた、朔良を支えてくれた人の中の一人だった。彼の前では頑なな朔良も素直になれる気がする。もし、小橋を紹介したのが主治医でなかったなら、朔良はプールにはいかなかっただろう。新しい人間関係を作る気は、毛頭なかった。

「もう杖は必要ないんだね。驚いたよ、すっかり元通りじゃないか。」
「先生が、プールでのリハビリを勧めてくださったおかげです。」
「君が頑張ったからだと聞いているよ。小橋先生は熱心で、よく勉強しているだろう?そう感じた事は無い?」
「はい、リハビリを終えた後で、色々なことをアドバイスして下さいます。たくさんの資格を持っているみたいです。仕事を終えてからも、後輩たちの体のケアもされているそうです。」
「ああ、今も続けているんだね。彼にも色々あったからね。」
「色々……?」
「ん?聞いていない?彼は柔道の選手だったんだよ。」
「それは、聞いた事があります。僕は柔道に興味が無くて、話が弾まなくて申し訳なかったですけど。」
「国体や世界大会にも出場して、結構いい成績を残しているはずだよ。将来はオリンピックに出るだろうと言われていたんだ。けどね、練習中に膝の靭帯を切断する大怪我をしたんだ。」
「靭帯って……それ、手術で治らなかったんですか?」
「時間をかければ、あるいは治ったかもしれない。今の内視鏡を使う最新治療が当時にあったならと思うね。有望選手で周囲の期待も大きかったから、無理をしてしまったんだろう。治りきっていないまま試合に強行出場してしまったんだ。そこで最悪にも同じ個所を傷めてしまって、それが致命傷になった。」
「あの……それで?」

朔良は聞かずにはいられなかった。今、柔道と関わっていないのは、きっとそこで小橋の柔道人生が終わったと言う事なのだろう。

「うん、彼の選手生命はそこで終わった。まあ、よくある話ですよと、笑っていたが、実際の所、割り切るまでには相当かかっただろうね。陸上をやっていた朔良君には、少しは気持ちがわかるんじゃない?」
「僕のハイジャンプなんて、遊びみたいなものです。比較できません。」

コンコン……と誰かが扉を叩いた。

「ん?誰だ……」

ドアの隙間から、ひょいと顔を出したのは話題の中心になっていた小橋だった。

「えっ?……先生?」
「ふふっ……来ちゃった。」
「あ~。脱力するから、いい年してそういう言い方はやめなさい。朔良君に言われるならともかく、君に言われても嬉しくもなんともない。」
「あ、先生、ひどい~!一緒に食べようと思って、ほら、二時間も並んでうさぎやのシュークリーム買って来たんですよ。甘いもの好きでしょう?」
「それは嬉しいな。ほら、朔良君も一緒に食べよう。飲み物はコーヒーでいいかな。ジュースが良い?」
「医者の不養生ですよ。糖尿っ気があるくせに、こんなでかいの食べてもいいんですか?」
「我慢もほどほどにしないと、身体によくない。」
「これで、腕のいい外科医って言うんだからなぁ。知りませんよ、血糖値が上がっても。」

朔良は目を丸くしていた。
この場に小橋が来るとは、思ってもみなかった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

|゚∀゚)「来ちゃった~」
(°∇°;) 「え~」

朔良は二人といると、ほっとするみたいです。
まだ、小橋との距離は近くないみたいです。
どうなりますやら…… (´-ω-`)


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2 Comments

此花咲耶  

Re: タイトルなし

> 信頼できる主治医(←名前?)と、頼れる小橋に 素の表情を見せる朔良
> 憂い顔の姫も 庇護したくなる程 可愛いけれど、笑顔の姫は もっと可愛いよね♪

主治医の名前、一応考えていたのですけど、出すタイミングを失った此花です……(´・ω・`)
あのね……|ω・`) 森本先生というのです。すまぬ~

ぎこちない朔良を可愛いと言ってくださってありがとうございます。(〃゚∇゚〃) ちゃんと恋したことがない朔良なので、大変です。

> もっともっと 笑顔になって欲しい!
> おっさん小橋に 期待していいのかな?

戸惑いと驚きの向こうに、きっと笑顔があると思います。
おっさん、がんばれ!(`・ω・´)「がんばる!」←33なのに、おっさん。

> いいとも~♪(≧∇≦)ノ ハーイ♪...byebye☆

コメントありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

2014/03/26 (Wed) 14:39 | REPLY |   

けいったん  

信頼できる主治医(←名前?)と、頼れる小林に 素の表情を見せる朔良
憂い顔の姫も 庇護したくなる程 可愛いけれど、笑顔の姫は もっと可愛いよね♪

もっともっと 笑顔になって欲しい!
おっさん小林に 期待していいのかな?

いいとも~♪(≧∇≦)ノ ハーイ♪...byebye☆

2014/03/26 (Wed) 11:42 | REPLY |   

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