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朔良咲く 17 

朔良の下げた頭を、ぽんぽんと彩は撫でた。

「もっと早くに、朔良と話をすればよかったな。そんな風に思ってたのか。俺は叔父さんにはとても感謝してるんだ。正直、大学に行かないで働くって決めるまでには葛藤もあったけど、今は毎日が大切だって思えるようになった。仕事も余暇も、とても充実してるんだ。朔良が俺に負い目を感じる事なんてないんだぞ。」
「ほんとに?無理してたり負け惜しみ言ったりしてない……?」
「俺が、そんな顔してるか?」
「ううん……野球やってた頃のおにいちゃんみたいだ。ちょっと前まで、眉間に縦じわだったけど。」
「そうだろ?実はな、最近また野球も始めたんだ。ソフトボールだけどな。小学生の練習を見てやってるんだ。日曜日にはしょっちゅう試合があるから、朔良も見に来るか?あ……人が大勢いる場所は苦手だったか。」
「うん。でも、おにいちゃんがいるなら大丈夫だと思う。」
「朔良が来ると、父兄席が盛り上がりそうだな。あ、試合よりも朔良に目が行くのは、やばいか。」
「僕が行っても、邪魔じゃない?」
「邪魔って……朔良が来るとみんな喜ぶぞ。俺も朔良が来てくれると嬉しいし鼻高々だ。」
「迷惑じゃないの?」
「朔良……?」

彩は思わず、まじまじと朔良の顔を見た。
誰もが惹かれる華の顔で、どうしてこれほどまでに朔良は卑屈で、自信がないのだろう。
子供のころに連れまわされたり、乱暴されたりした不幸な過去があるせいか、朔良は彩以外の誰にも心を開かない。

「いつも、そんな風に思ってたのか。」

頑なな朔良は誰かが騒ぐ度に、どんどん深い場所へと一人沈んでゆく。向けられる全ての好意を信じ切れず、ひたすら排斥して生きてきた朔良の孤独に、やっと気が付いた彩だった。
どれ程慕われても、恋人としては手を取ることのできないが、放ってはおけなかった。

「朔良。」
「なぁに?」
「あのな、ちゃんと言ったことなかったかもしれないけどな、俺は昔っから朔良の事大好きだぞ。」
「……え……」
「周囲を見回してみろよ。みんな朔良がそこにいるだけでざわめくだろ?朔良に注目してるんだよ。」
「それは、僕が社長の息子だからだよ。会社の人たちは、僕の機嫌を取っておけば、何か見返りがあるかもしれないって思ってるんだ。」
「社長がそんな人間じゃないって、みんな知ってるぞ。そうか……朔良はそんなに自分に自信がないのか。」

朔良は視線をずらした。
まだ大事なことを言えていない。

『朔良くんを虐めているのは、朔良君本人じゃないか』

不意に、インストラクター小橋の言った言葉を思いだした。

「今日ね、水泳の先生にも似たようなこと言われたよ。僕が理学療法士になりたいって話をした時に……」
「朔良っ!なりたいもの見つかったのか!」
「……うん……考えてみようと思ってる。」
「もう伯父さんたちにも話したのか?」
「ううん、まだ。一番におにいちゃんに言わなきゃって……」
「朔良!乾杯しよう!」

朔良が驚くほど、彩は手放しで喜んでいた。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

自分のせいで大学進学を諦めさせたと、ずっと彩に負い目を感じていた朔良。
自分は見つけた夢をかなえるために、進学したいというつもりでした。

久しぶりに会ったので、いろいろ話が有るのです。

(つд・`。)・゚「おにいちゃん……ごめんね……」

(〃^∇^)o彡旦「朔良!乾杯しよう!」

彩はいいやつですな、ふむ…… (´-ω-`)



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