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小説・若様と過ごした夏・40 

そして、今年も夏休みはやって来た。


医学部を目指している友達の麻友は、去年より厳しい夏休みを迎えるらしい。

「がんばれよ、親友。」


「真子~・・・」


「健闘を祈る。」


戦場に友人を見送って、あたしはおばあちゃん家へと今年も馴れた電車を乗り継ぐ。


実はね、胸躍る電話があったの。

「こんにちわ~!」


玄関の打ち水跡が、清々しい。


「あばあちゃん~?いないの?」


勝手知ったる、おばあちゃん家。


「失礼しま~す・・・」


おざなりに、声だけかけて部屋に入った・・・!


風の入る部屋の窓際のベッドで、宗ちゃんが丸まって熟睡していた。


これって、デジャブ・・・?


物音に気が付いたのか、眩しそうに片目を開けた。

「そなた、何ゆえかような所から・・・ずが・・た・かい・・」


きゃ~~~っ!


若様、来た~~!


「頭が高いって、誰に言ってんの?」

あたしは両頬を、むにゅっと引っ張った。


「真子っ!?」


宗ちゃんから抜けた若様が、きゅんきゅんとあたしに飛びついてきた。


お盆が近くなると、霊は結構自由にできるらしい。


宗ちゃんは、この夏も若様に振り回されるのかとうんざりしているようだけど、あたしは涙のお別れをした若様と会えたのがうれしくて仕方がなかった。


「母上様と一緒?」


「父上も、兄上もご一緒じゃ。」


「おお~!会えるの楽しみ。」


「父上の男振りには、当主殿が目を丸くしておったぞ。」


「や~~~ん・・・」

宗ちゃんがぽつりと


「俺、この夏で死ぬかもしれない・・・」


と、つぶやいたが無視することにした。

「若様。りんご飴買いに行こう。」


「真子っ。」


あたしの夏休みは、始まったばかりだった。




             完


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