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小説・若様と過ごした夏・39 

にこにこと、こちらに向けて若様は手を振った。


どれほどの時間が流れたのか、読経を終えたご住職が自室の様子を伺いに来たとき、あたし達は全員茫然自失状態だった。


「お姫様(おひいさま)!?」


ぐったりと柱にもたれかかった、おばあちゃん。


渾身の力で若様のために祈った後は、精根尽き果てた様子で、子供の頃から密かに篠塚のお姫様が大好きだったというご住職は、真っ青だった。


「とにかく、横にならなければっ。」


もしもし・・・


わたし達のこと、見えていますか・・・?


佳奈叔母さんは、考えることが有りすぎて、


「今は、何も言えない。」


と、言ったきり口をつぐんだ。


水泳選手か・・・


宗ちゃんと一緒に生まれて、すぐに亡くなってしまった赤ちゃんの事を考えているのかな・・・?


若様のお母さんは、佳奈叔母さんの中にいて、同じような目にあった佳奈叔母さんを守ったのだ、きっと。


宗ちゃんはというと・・・。


報告しますと、死人のようになっています。


「・・・ひでぇ・・・」


そこにあった、鏡を覗いてさすがに尋常じゃないやつれっぷりを目にして、ショックを受けていた。


「もう、絶対霊なんて憑けない。」


力強く宣言するのは良いけど、その顔で言われても全然説得力ないよ、宗ちゃん・・・


400年目の節目に、営まれた大法要は、こうして終わった。


本堂の西にある大きな慰霊碑が、割れていたそうだけどあたしはそこに囚われていた人たちが、みんな一緒に彼岸に旅立ったと知っていた。


ぼうっとした意識の中で、お芳さんの声が聞こえた。


「真子殿。おかげをもちまして我等、若様と共に彼岸に逝くことができます。」


「若様がお世話になりました。これより方々も共に、昇ります。」


・・・大団円。

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