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嘘つきな唇 49 

里流は悲しかった。
酒の上の事と、全てを忘れてしまおうと思ったのに、話を蒸し返して彩は何を考えているのだろう。

里流の好きだった彩は、本当に欠片もなくなってしまって、もしかするとやはり生活の憂さを自分に向けたいだけなのではないか……そんなはずはないと思いながらも、ついそんな風に考えてしまう。
それとも一度抱かれた自分は、誰にでも身体を開く便利な存在と思われてしまったのか……
里流は、唇をかんだ。

「待ってくれ、里流。違うんだ。話を聞いてくれ。」

「おれは……彩さんに失望したくないです……」

その言葉に思わず足を止めた彩は、昨夜の心無い行為がどれほど里流を傷つけたものだったか、改めて知った。
酔いに任せて、まるでレイプするように里流を力任せに蹂躙した。ぼんやりとした夕べの記憶の中で、彩は里流の悲鳴を何度も聞いた。

驚いた事に、里流は何事もなかったような顔をして彩の所へ来たが、傷ついていないわけがない。
車のライトに浮かんだ里流は、肩を落として小さく見えた。

「里流……ごめん……なんて言えばいいかわからない。今日、笑っていたからすっかり安心してしまったんだ。俺はたった一晩で、里流がずっと大切にしていたものまで全部壊してしまったんだな。」

「彩さん。おれは……今でも彩さんが好きです。おれにとって彩さんは……」

精一杯の強がりも、もう限界だった。
里流はそれ以上何も言えなくなって、彩を見つめているだけだった。

ほんの少し唇が触れただけで頬が赤らんだのも、彩の事を考えただけで下肢が熱を持つのも里流には不思議ではなかったが、その先を思うと足がすくむ。
傍に居たいが、傷つきたくはない。里流は自分の中の相反する思いに苛まれていた。

彩に手酷く抱かれた時、里流は確かに反応していた。彩が自分を抱いて、吐精したことに安堵さえした。
今の彩は、自分の事をどう思っているのだろう。どう思って誘っているのだろう。
本音を知りたかったが、知るのが怖かった。

上手く言葉に出来ず、里流はその場に立ちつくしていた。
ゆっくりと彩は近付いた。

「里流……」

手負いの動物に接するように、ゆっくりと里流の傍に寄ると、力を込めて胸の中に抱きしめた。

「……もう二度と、里流に酷いことはしない。誓う……うんと優しくする。どんな俺も好きだと里流は言ってくれたけど、無理をさせたんだな。ごめん。里流……俺はいつも自分の事だけで精いっぱいで、里流の事何も分かろうとしなかった。里流には何も言わなくてもわかるんだと、勝手に思い込んでいた。そんな都合の良い話ないよな……」

すっぽりと腕の中に抱きとめられて、里流は温い湯に包まれたように、全身で彩の言葉を聞いた。





本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
パソコンが調子悪くて、更新が今頃になってしまいました。すまぬ~……(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚+


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