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嘘つきな唇 42 

弧を描いて、ボールがグラブに吸いこまれた。
ぱん……と、小気味よい音が響く。互いに懐かしい感覚だった。
いつも走っていたロード練習のコースを、逆に辿った河川敷で、三人はキャッチボールに興じた。

「里流。大学は楽しいか?」

返球と共に、里流は答えた。

「楽しいって言うよりも、単位落すわけにいかないんで必死です。」

「そうか。頑張ってるんだな。」

「留年したら、学資ローンの返済が大変です。彩さんの仕事は、上手くいってるみたいですね。昨日、同僚の方がそう言ってました。」

里流は夕べと同じことを口にしたが、彩は気付いていない風だった。

「俺の仕事か?一人では何もできないよ。チームで当たって何とかなってる感じだな。俺は一番の下っ端で、助けてもらってばかりなんだ。まだまだ戦力には程遠い。」

「そんな風に言うと、なんだか部活みたいですね。」

「そうだな。上司との関係は上下関係のきつい部活みたいなもんだ。負けてもいい試合が一つもないのが辛いところだな。おっと!」

受け損ねたボールが点々と転がるのを彩は追い、沢口は里流に目配せした。

「今夜、二人で飲みに行け。誘っておいて俺は急用で行けなくなることにするから、ちゃんと話しろよ。いいな?」

「話ならここでするからいいよ。それに……おれと彩さんはそんなんじゃないんだ。彩さんには織田朔良がいるから……もう、いいんだ。」

「……どうした?」

ぽんと、彩がボールを寄越した。渡されたボールをぎゅっと握りしめ、沢口は意を決した。
煮え切らない里流の代わりに、もう自分が言うしかないと思った。

「織田先輩。里流と話をしてやってください。何だかわからないけど、こいつ変なんです。」

「……変って?」

「ずっと先輩と会いたいって言ってたくせに、もういいとか訳の分からない事言いだすし。俺もこいつが、何考えているのかわからなくなって。」

「沢口!もう良いって言ってるだろ!後輩だからっていつまでも、追いかけられるなんて、迷惑なんだよ。」

売り言葉に買い言葉となり、沢口も歯止めが利かなくなった。里流がどれほど彩を思っていたか、知っている沢口には納得がいかなかった。

「誰が言ったよ?迷惑だって?!先輩が直接お前に言ったのか?大学に行ったって、里流はずっと先輩の話ばかりしてたじゃないか。なのに、やっと会えたらもういいって、何だよ。里流の思いはそんな薄っぺらいものだったのかよ。」

「沢口……。」

「俺がどうこう言うべきじゃない、当人同士の問題だって分かるけど……何もしないで簡単に諦めんなよ。」

「なんで……沢口が泣くの……」

「里流が素直じゃないからだろ。バカ。」

二人のやり取りを聞いて居た彩は、思わず傍に寄り肩を抱いた。




本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

彩が里流の傍を離れたとき、毎朝一緒に走ってくれた沢口は里流の思いも知っています。

( *`ω´) 「まったくも~~~。この駄目っこめ。」

(´;ω;`) 「だって……」

友達思いの沢口には、ちゃんと彼女がいたりします。 ヾ(〃^∇^)ノ


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5 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 高校時代から 数年ぶりの 彩と里流のキャッチボール
> 投げる一球毎に 受け止める一球毎に 互いの思いが通じ合えばいいのに…
>
そうなればいいなぁと、互いに思っている場面です。

> でも もう あの頃のように 何の枷も無く 無心になれないよね。

あの日がありますから……でも、里流は彩のささくれた心をいやす術を持っていると思います。
がんばれ、里流。(`・ω・´)

> 気付かない振りをしている彩と 言い出せずにいる里流に 言った沢口の言葉が、良い後押しになって欲しいな。
> 一球( `・ω・´)ノ ⌒゜⌒ヽ(`・ω・´ )入魂...byebye☆ 

あのころに戻りたいと、だれもが思う日があります。(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚
上手くいきますように……←書いといて。

コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2014/01/25 (Sat) 21:05 | REPLY |   

此花咲耶  

ちよさま

> 沢口くん、グッジョブ !! (。•̀ω-)b

(〃゚∇゚〃) うふふ~、チョイ役の沢口君、大喜びです。

> 彩は、里流にどんな言葉をかけてくれるのかな…

絶賛、自己嫌悪中の彩です。

上手くいくといいね~(〃ー〃)
>
> 今後の展開が楽しみでッス(*˘︶˘*)
> どきがムネムネ~!!

ちよさんにどきどきしてもらえる展開に、なれば良いなぁと思います。
♪ψ(=ФωФ)ψ←こっちにならないようにします!(`・ω・´)

コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2014/01/25 (Sat) 21:01 | REPLY |   

けいったん  

高校時代から 数年ぶりの 彩と里流のキャッチボール
投げる一球毎に 受け止める一球毎に 互いの思いが通じ合えばいいのに…

でも もう あの頃のように 何の枷も無く 無心になれないよね。

気付かない振りをしている彩と 言い出せずにいる里流に 言った沢口の言葉が、良い後押しになって欲しいな。
一球( `・ω・´)ノ ⌒゜⌒ヽ(`・ω・´ )入魂...byebye☆ 


2014/01/25 (Sat) 10:23 | REPLY |   

ちよ  

沢口くん、グッジョブ !! (。•̀ω-)b

彩は、里流にどんな言葉をかけてくれるのかな…

今後の展開が楽しみでッス(*˘︶˘*)
どきがムネムネ~!!

2014/01/24 (Fri) 23:40 | EDIT | REPLY |   

此花咲耶  

拍手コメントさま

里流はお友達に恵まれているなぁと思います。
そして、今は少し距離がありますけど、過去に彩も里流を助けてくれました。

書いていると実際より幼いなぁと思ったりもします。(´・ω・`) ←大人書くのむつかしいのよ……
想いをきちんと伝えること。難しくて、もどかしくて、進展もなかなかですがもう少しお付き合いください。
コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2014/01/24 (Fri) 23:26 | REPLY |   

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