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嘘つきな唇 41 

「そうじゃないだろ。」

裏口にひょいと顔を出した沢口が、何を言ってるんだ、里流と声を掛けて来た。

「まあ、どうしても欲しかったって言うのは嘘じゃないだろうけど。こいつね、先輩。毎日、抱きしめるようにしてグラブの手入れしてたんすよ。俺じゃなくても、もういっそ貰っちゃえばって言いますよ。」

「やめろよ、沢口。余計な事言うな。」

先輩のだから、欲しかったんだろ?と言った親友に、どう返事をしていいかわからない里流だった。

「織田先輩。まだ仕事有るなら言って下さい。俺も、手伝います。」

「いや、もう終わりだ。開店休業みたいなものだから、空きケースを片付けるくらいしか用はないんだ。うちみたいな小店は、親父の代で終わりだろうな。配達も夕方、数件あるかないかだから。」

「そうっすか。どこも商売は大変ですよね。」

「まあ、酒屋では食っていけないけど、仕事があるから何とかやれてるよ。なんだかんだ言っても仕事があって収入が保証されてるってのは、恵まれていると思う。……複雑だけどな。」

彩が河川敷にぼんやり坐っているのを見たことのある沢口と、葛藤を抱えた彩が暴走したのを受け止めた里流は、肩をすくめるしかなかった。

店のシャッターを下ろし、三人はグラブを抱えて河川敷へと向かった。

*****

「なぁ。何かあったの?」

沢口がこっそりと耳打ちしてくる。

「え?何が?」

「織田先輩との会話が、固いっつ~か妙にぎこちないからさ。里流は先輩の事、ずっと好きだったろ?先輩が朔良姫のリハビリに付き合うって決めた時、わんわん泣いたよな?」

「沢口。昔の事だよ。いいから沢口は余計な事言うなよ?彩さんに迷惑かもしれないだろう。」

きつい目で告げると、里流は先を行く彩の背を追った。

「ばか……どうせ、またつまらない遠慮してんだろ?」

*****

彩が織田朔良の傍にいると告げた日、里流は蒼白の顔のまま黙々とグラウンドを走っていた。

陽が落ちても、ふらふらと延々走り続ける里流を止めたのは、友人の沢口だった。

「里流!もうやめろ!」

「ああ……沢口。どう……したの?」

「どうしたのじゃないだろう?いつまで走ってるんだ。先輩と何かあったんだろ。言ってみろよ?」

「何も……ない。元々何もなかった。おれが一方的に好きになって、勝手に告白しただけだ。」

「告白したのか?それで先輩はどう……?」

「……彩さんはこれからずっと織田朔良の傍に居るって……。織田朔良の怪我が心配だからって。仕方ないだろう?彩さんにとっての優先順位はおれなんかよりも織田朔良の方がずっと上なんだ……」

虚ろな瞳を空に向けたまま、そう呟いて以来、里流は何も言わなかった。

「里流はそれでいいのか?ちゃんと自分の気持ち伝えたのか?」

問われて視線が彷徨った。
そう言われても、里流にはどうすることもできなかった。
言えばきっと彩への負担になる。

「沢口……」

ぼろ……と堰を切ったように涙が溢れた。

別れを告げられたあの日、里流の頬にはらはらといくつもの涙の粒が転がった。

里流が沢口の前で、肩を震わせて泣いた事を彩は知らなかった。





本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

昨夜は寝てしまいました。すまぬ~~(´・ω・`)なんとか頑張ったのですが、ストックが尽きたので大変です。
しかもね、パソコンが いよいよ危ない感じに……(´;ω;`) ←お醤油だな……。

ぎこちない彩と里流の様子に、友人の沢口はどこかおかしいと気付いているようです。

青春ってもどかしいね~……(*´・ω・)(・ω・`*)ネー


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