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嘘つきな唇 37 

互いに迷っていた。
どこまで踏み込んでいいのかわからないのは、お互い様だ。
気まずい空気の中で、里流は高く跳ねる自分の心臓の音が、彩に聞こえはしまいかと気にしていた。

進学で長く地元を離れていた里流は、少女と見まごう美貌の織田朔良が彩の傍に今もいると思っていた。そして朔良と自分では比較の対象にもならないことも、自覚していた。

しかしそっと唇を啄ばめば、彩が応えて返してくる。おずおずと舌先を伸ばし、里流は彩の唇を吸った。

*****

里流に触れる彩の指先は、春先の雪解け水のように冷たく、僅かに期待する気持ちを萎えさせた。気の迷いで肌を合わせても、自分の方を向くことはないだろう。
それでも、少しの間でも彩が自分と関わって、輝いていた頃を思い出してくれればと思う。

「彩さん……おれ達、本当に不器用でしたね。」

「ああ……俺も自分の要領の悪さが、時々嫌になる。」

里流は、ふと彩がかなり痩せていることに気が付いた。
あれほど大きくたくましく思えた背中が、今は肩も薄い。

「彩さん。」

ぎこちなく下肢を這う手を掴んで、かり……と指に歯を立てた。

「今だけ……今だけ……でいいです。……何も望みませんから、少しの間このまま傍に……。」

小さく口にした。
決して自分のモノにならない優しい指が、里流を追い詰めてゆく。
里流の固く屹立した乳首を、彩は面白がって指ではじいた。

「里流のここ、ガキの頃河原に取りに行った茱萸(ぐみ)みたいだな。赤くなってる。食ったことあるだろ。酸っぱいだけで美味くもなんともない果実だ。」

「は……ふっ……」

「里流、何をぶつぶつ言ってるんだ?」

「う……ん。あ、感じる……って。」

「達きそうならゴム付けろ。汚れる。」

「は……い……」

「そういう物は、そこに入ってるだろ。」

自分の持ち物に手を添えて、里流はゴムを被せた。哀しい行為は、自慰と変わらない。
どうしていいか分からず、泣きそうな里流の視線が、ぼんやりと空を彷徨ったのを彩は見逃さなかった。

「里流……まさか……経験ないのか?」

「はい。キスして……誘ったのにすみません。」

「いや、いい。手だけでイクか?」

「いえ………」

「じゃあ、自分でケツにこれを塗って、うつ伏せになれ。その位は知っているんだろう?」

「……は……い。でも、これ……」

一見注射器のような潤滑油を渡されて、固まった里流だった。使い方がわからない。目元がじんと熱を持つのを堪え、逃げ道を探した。
ふっと彩の表情が緩んだ。

「貸してみろ。……そうか、初めてだったら自分では無理かもな。男は濡れるようには出来ていないから、こういうものが必要なんだ。」

「彩さんは……織田朔良と?」

「朔良?あいつがどうかしたのか?」

「いえ、何でもない……です。あっ……あっ……」

何でもないと話を切ってしまったのは、その先を聞きたくなかったからだ。

ぬるい液体が、ゆっくりと里流を侵食する。




本日もお読みいただきありがとうございます。

今日も何とか上がりました。

精神的に辛いお話は、書いていても落としどころをどこにするか悩んでしまいます。

一応、そこがお話の大切な肝なので、伝わるようにがんばりたいです。

以前、お醤油をこぼして香ばしくなったパソコンの調子が、いよいよ最悪の状態です。春モデルの型落ちが安くなるまで、頑張ってくれないかなぁ……(´・ω・`)


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