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嘘つきな唇 35 

里流は瞠目した後、一つ息を吐き固く目を閉じた。
そして薄い笑みを向けた。

「……良いですよ。織田さんは酔っているし、酔いが醒めるまで少し休みましょうか。」

「ああ……」

睡眠不足のせいだろうか、どこかやつれて見える彩の話を聞きたいと思った。
里流も彩の事を何も知らずに、いきなり声を掛けたわけではない。
全てを知っているわけではないが、彩の家の事情を、地元に居る野球部の友人たちから少しは聞いて知っている。すっかり日が落ちた遅い夕刻、一人でぼんやり河原で佇む姿を見たと、数人から聞いて胸が騒いだ。
卒業以来、会う機会は無かったが、里流にとって初恋の人の存在は離れていても様子を問わずにいられないほど気になっていた。

「何かさ、俺が見たときは、生活に疲れて黄昏ている親父って言う風だったぜ。何か声掛けられる雰囲気じゃなかった。」

「そうなんだ。織田さん、仕事上手くいってないのかな?」

「どうかな。就職できてった言っても、朔良姫の親の所だろ?あそこは理系の大卒が入るような所だからさ。先輩がいくら頭良くても高卒レベルじゃしんどいんじゃないかな。ほら、IT関係ならやっぱり資格とか必要だろうし。」

「そうだよね……。大丈夫なのかな、先輩。」

「就職も他に、もっと楽な所もあるだろうと思うけど、朔良姫のこともあるからだろうな。親戚だしさ。里流、先輩と仲良かっただろ?心配だったら、一度電話でもしてみろよ。番号知ってるんだろ?きっと喜ぶよ。」

「……ん、知ってるけど……電話はどうかな。」

里流は何度も電話をしようとして、その都度思いきれなかった。
彩の傍らには、ずっと織田朔良がいるはずだ。そう考えると、自分の出る幕などないと思ってしまう。
あの日、里流と別れて朔良の傍に居る事にしたと告げたのは、彩だった。
もしも何の用だと言われたら、何と返事をすればいだろう。

帰省するたび短期バイトで入る居酒屋で、最近仕事関係の人と呑む彩を何度か見かけた。
思い切って話掛けようと思っていた矢先に、寝こんでしまった彩を囲む同僚を見つけ、勇気を出して声を掛けた。

里流の中では数年たっても、彩はまだ高校の先輩のままだった。
喘息に苦しむ自分に合わせて先を走る、優しい広い背中を持っているはずだった。

しかし彩は変化していた。
心から心配する里流の視線を、疲弊していた彩は一方的に誤解してしまった。

*****

したたかに酔った彩を支え、二人は安ホテルの入り口をくぐった。
互いに足を踏み入れたことのない場所だったが、深く考えないようにしていた。

「とりあえずシャワーでも浴びるか?」

「あ……の……?織田さん。酔っているでしょう?シャワーよりも水を飲んだ方がいいですよ。横になったら少しは楽に……」

「俺に指図するのか?優位に立ったつもりか、里流。」

「……えっ?そんなつもりは……あっ!」

いきなり腹に膝蹴りを喰らい、里流はその場にひっくり返った。どっと覆いかぶさってきた背の高い彩の身体の重みを、里流は押しのけられなかった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

酔っているとはいえ、彩のこの態度はどうなんだろう……おとなしい里流に向けた行き場のない彩の思い。
八つ当たりだよね~……(´・ω・`)


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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 彩!
> 里流、里流だよ~!
> ねぇねぇ 分かっているの?

( *`ω´) わかってるけど……だめっこな自分を見せたくない。

> 側に居るのは 里流なんだよ~!
> やっと会えたのに 泥酔だとは言え、こんな事を言っちゃうの? やっちゃうの?

(。´・ω`)ノ(つд・`。)・゚「ご、ごめん……里流。」←酔いがさめたら自己嫌悪に陥るだろうなぁ……
>
> 彩の バカバカ゚、バカァ~( T3)ノ"...byebye☆

けいったんさんにも叱られて、どんどんどつぼの彩です。ファンタジーの中にも、うっすらリアルを感じていただければと思っています。上手くいけば嬉しいです。 ヾ(〃^∇^)ノ

コメントありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

2014/01/14 (Tue) 20:41 | REPLY |   

けいったん  

彩!
里流、里流だよ~!
ねぇねぇ 分かっているの?
側に居るのは 里流なんだよ~!
やっと会えたのに 泥酔だとは言え、こんな事を言っちゃうの? やっちゃうの?

彩の バカバカ゚、バカァ~( T3)ノ"...byebye☆


2014/01/14 (Tue) 09:49 | REPLY |   

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