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嘘つきな唇 31 

電話は滅多にかけたことなど無い彩の母親からだった。

「もしもし……?あ、母さん?どうしたの?えっ……父さんが……!?」

傍に居る朔良が驚くほど、彩は慌てていた。
思わず朔良も耳を寄せた。
電話の向こうでは彩の母親が、動転していた。受話器の向こうで彩を呼ぶ悲鳴のような声が、朔良にも漏れ聞こえてきた。

「お父さんが……?様子がおかしいの?今帰り道だから、直ぐに着く。分かった、こちらからすぐに救急車に電話しておくよ。お母さんは取りあえず衣服を緩めてあげて。たぶん動かさない方が良いから、その場に寝かせて毛布だけ掛けてあげて。そう、意識はあるんだね?」

彩が頷くと、朔良は直ぐに119番へ連絡をした。住所氏名、既往症はないこと、移動中だが数分で自宅へ到着する旨を伝える。

「おにいちゃん。伯父さんは、普段から血圧とか高かったの?」

「聞いたこと無い。だけどどうやら何か口走っているみたいだから、きっと脳じゃないかと思う。」

「そう。とにかく早く帰ろう。」

朔良も思わず前方を注視した。自分の事よりも常に周囲に気を使う、彩によく似た優しい伯父が心配だった。

*****

彩の自宅には、近所の人が数人居て、心配そうに店先から中をのぞき込んでいた。

「世間との付き合いを普段から大切にしているから、うちは大手量販店が近くに出来ても何とか細々と酒屋をやっていけているんだよ。」

「大手との値段勝負何て、うちみたいに小さなところはできないものね。良いお客さんばかりでありがたいことね。」

そんな話を晩酌しながら、両親は良くしていた。
彩の父は長男という事もあり、祖父の代からの小さな酒屋を継いで、夫婦二人で守って来た。だが、どんどん商いが縮小してゆく中で、経費だけが重なってゆき経営は楽ではなかった。
傍目には歯がゆく見える商売も、両親にとっては大切な城だった。今は、彩に継がせる気はないが借金だけは背負わせないようにと、夫婦は懸命に働いてきた。

「あ。彩君が帰って来たわ。」

ざっと人の波が道を開いた先に、倒れた父の足先が見えた。

「お母さん!親父はどうなの?」

「彩。……意識はあるの。でも、様子が……」

青ざめた母がほっとしたような顔を向ける。父は虚ろな目を開き、ぼんやりと彩を見て居た。

「お父さん。今日が何曜日か分かる?何曜日?」

「……配達は、終わったぞ。飯……にするか、母さん。」

「お父さん。名前を言ってみて。自分の名前だよ。わかる?」

「夕方からだな……」

反応はするものの、視線は彷徨っている。投げかけた質問にも、的外れでちぐはぐな答えしか返ってこなかった。

「彩……お父さんは大丈夫かしら。」

「母さんは、救急車に一緒に乗った方が良い。俺は直ぐに車で後を追うから。入院することになるだろうから、落ち着いたら一回帰って支度しに戻るよ。お父さんは大丈夫だ。」

駆け付けた救急隊員は、様子を聞くと、すぐさま脳外科のある病院へ連絡を取り、搬送手段を取った。




本日もお読みいただきありがとうございました。(〃゚∇゚〃)

彩はこれから大変です。やっと少し希望の光が見えたのにね。 (´-ω-`)ふむ~

……ε=(ノ゚Д゚)ノ 一大事です~



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4 Comments

此花咲耶  

みかさま (〃゚∇゚〃)

> 彼女の父も くも膜下出血で入院して一命をとりとめたり、私の祖父は脳梗塞で数年寝込んで他界しました。
> 脳の病気は怖いですよね。
> その闘病生活があったから、きえさんがすぐに逝ってくれたことが救いだったのか・・・
> どちらが良かったのかは分かりません。

去年の春ごろ、そんな話をお聞きしたような気がします。作中の中で彩パパが倒れたのは、周囲に復帰できた実例があったからです。
>
> みなさんに背中を押されて、みか と呼んでいただこうかと思いいたりました。
> 彼女のブログにこれ以上書きこむのもどうかと思うので、一念発起で私もブログでも作ろうかなと少し思っているところです。

では、これからは「みかさん」とお呼びいたします。文章を拝見していると、きえちんのお友達だけあって書ける人という印象を持ちました。
これを機会に是非、思い切ってご自分の場所を作ってはいかがでしょう。(〃゚∇゚〃) わくわく……是非、お知らせくださいね。
>
> でもマメではありませんので、こうしてコメント欄で語っているくらいがちょうどいいのでしょうかね。

コメントもありがとうございます。とてもうれしいです。
>
> とにかくおしゃべりするのが好きな人でしたよ。
> こっちが戸惑っている間に延々と話し続ける。
> この弾丸のような口はどこから生まれるのかと出会った当時は焦ったくらいでした。
> うまくつきあえるのかなぁとかね。
> でも知れば知るほど、いい人でした。

きえちんの妹さまから、メールが届きました。生前のお付き合いをありがとうございましたと、書かれていました。入院した時に、あなたはどなたですかと問われて、此花は一世一代の大嘘をこきました。

此花咲耶という名の小説家志望で、サイトを作っていること(ここは嘘ではないですね)、時々煮詰まったりくじけそうになったりした時に、きえちんが優しいコメントを入れてくださったこと、それからは時々作品の感想などを送ってくださること(……あれ、これも嘘じゃないな~)そして、コメントを下さるときのハンドルネームが「きえちん」なのですと告げました。きえちんが、小説を書いているという話はしていません。
少し元気になったとき、このちんっ!妹が何を言ったの~~!!!!と、大慌てでした。このくらいの作り話はしますよ、だって字書きのはしくれですも~ん(〃゚∇゚〃)えへへ……と、笑っておきました。もし、何か話題が出たらお話し合わせてくださいね。←共犯のお誘い。
>
> こちらも寒いです。
> みなさんも色々と家庭の事情とかありますよね。
>
> それらをおろそかにすることは望まないと思いますので、やるべきことを優先させてくださいね。
>
> 人様のコメント欄を荒らすようですみませんでした。
> こちらはお話に関するものを語るところなのでしょう。
> 思い出に浸ってごめんなさい。

お気遣いなく。むしろ喪失感を埋めてくださったような気がしています。
此花ときえちんのお付き合いも、それほど長くはないのです。二年と少しくらいではないでしょうか。
それでも色々な話をしました。
手術後、気弱になったきえちんが「みんなにお別れを言ってね、待たないでねと伝えてね。」と言ったことがありました。でも、此花はその言葉には頷けませんでした。自分が弱音を吐くより、いつも励ましてくれていたような気がします。
みかさんが、きえちんがすべてを託せるにふさわしい人だったと思います。

後ね、きえちんは「淋しい夜」という作品を本にまとめたいと思っていたようです。果たせぬ夢だったかもしれません。

コメントありがとうございました。公開メールみたいですね。 ヾ(〃^∇^)ノきゃ~

2014/01/11 (Sat) 16:02 | REPLY |   

たつみきえ代理人  

ありがとうございます。

彼女の父も くも膜下出血で入院して一命をとりとめたり、私の祖父は脳梗塞で数年寝込んで他界しました。
脳の病気は怖いですよね。
その闘病生活があったから、きえさんがすぐに逝ってくれたことが救いだったのか・・・
どちらが良かったのかは分かりません。

みなさんに背中を押されて、みか と呼んでいただこうかと思いいたりました。
彼女のブログにこれ以上書きこむのもどうかと思うので、一念発起で私もブログでも作ろうかなと少し思っているところです。

でもマメではありませんので、こうしてコメント欄で語っているくらいがちょうどいいのでしょうかね。

とにかくおしゃべりするのが好きな人でしたよ。
こっちが戸惑っている間に延々と話し続ける。
この弾丸のような口はどこから生まれるのかと出会った当時は焦ったくらいでした。
うまくつきあえるのかなぁとかね。
でも知れば知るほど、いい人でした。

こちらも寒いです。
みなさんも色々と家庭の事情とかありますよね。

それらをおろそかにすることは望まないと思いますので、やるべきことを優先させてくださいね。

人様のコメント欄を荒らすようですみませんでした。
こちらはお話に関するものを語るところなのでしょう。
思い出に浸ってごめんなさい。

2014/01/11 (Sat) 07:59 | REPLY |   

此花咲耶  

けいったんさま

> 昨日の続きが、気になって来て見れば…こういう事だったのかーーー!<( ̄口 ̄||)>!!!OH NO!!!<(|| ̄口 ̄)>
>
> 彩パパ、大丈夫かしら!!

大丈夫でっす!(`・ω・´)

> 実は、私の亡くなった父も 脳梗塞になった事があったので その事と重なってしまいます。
> 父の場合は、軽くて 絶対安静の入院で 点滴と内服薬の治療で 回復しましたが、彩パパは もっと重そうですね。。。


う~……ごめんなさい。そんな事とはつゆ知らず。でも、発見が早くて彩パパもちゃんと復活しますので心配しないでね。思い出させるような場面になってしまったんですね。。・゚゚ ’゜(*/□\*) ’゜゚゚・。すまぬ~

>
> 横レス(_ _)人ゴメンナサイ
> きえちんの代理人様へ
> きえちんとは 長い間のお付き合いの様ですね。
> 羨ましい…
> 今でも 明るくて面白いきえちんですが、その当時って どんな女性だったのかな?
> それと、いつまでも 「代理人様」では、失礼なんじゃないかと思いますので
> ハンドネームか、イニシャルでもいいですから 教えて下されば 嬉しいです

せっかくのご縁ですから、もしよろしければ
……と、此花も思います。正直に言うと、もっとお話がしたいです。
ご覧になっていたなら、お知らせくださるとうれしいです。

> 今日も 寒いです。
> 皆さん、風邪を引かない様に 外出時は マスク、帰宅時には ウガイ+手洗いを 忘れないでね!
> (((p(>◇<)q))) サムイー!!...byebye☆

こちらでも少し雪が降りました。山はうっすら雪化粧で寒そうです。
けいったんさんも、お風邪など召しませぬように。
コメントありがとうございました。 (〃゚∇゚〃)  

2014/01/10 (Fri) 21:04 | REPLY |   

けいったん  

昨日の続きが、気になって来て見れば…こういう事だったのかーーー!<( ̄口 ̄||)>!!!OH NO!!!<(|| ̄口 ̄)>

彩パパ、大丈夫かしら!!
実は、私の亡くなった父も 脳梗塞になった事があったので その事と重なってしまいます。
父の場合は、軽くて 絶対安静の入院で 点滴と内服薬の治療で 回復しましたが、彩パパは もっと重そうですね。。。

横レス(_ _)人ゴメンナサイ
きえちんの代理人様へ
きえちんとは 長い間のお付き合いの様ですね。
羨ましい…
今でも 明るくて面白いきえちんですが、その当時って どんな女性だったのかな?
それと、いつまでも 「代理人様」では、失礼なんじゃないかと思いますので
ハンドネームか、イニシャルでもいいですから 教えて下されば 嬉しいです

今日も 寒いです。
皆さん、風邪を引かない様に 外出時は マスク、帰宅時には ウガイ+手洗いを 忘れないでね!
(((p(>◇<)q))) サムイー!!...byebye☆
 

2014/01/10 (Fri) 10:26 | REPLY |   

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