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嘘つきな唇 8 

数日たって、意を決した朔良は島本だけに声を掛けた。

「……話があるんだけど。」

「なんだ?」

島本がグループのリーダー格と知った朔良は、考えた末に交換条件を出した。

「あんたが一応部長なんだろ?陸上部としての体裁を整えてよ。陸連に参加するには、顧問も必要だし色々やることあるんだ。ぼくはハイジャンプの練習もしたいし、新人戦にも出たいんだ。」

「なんだよ、何を言いだすかと思ったら。……めんどくせぇなぁ。真面目に部活なんかやらなくたって、テストの成績さえそこそことってれば、推薦で大学位行けるだろ?」

「そんなんじゃない。ハイジャンプを続けたいんだ。」

「見返りあんのか?俺は今更陸上なんて、かったるいことする気はないぞ。」

「……ぼくが頼んでも?」

「朔良姫……」

朔良は唇を舐めた。日焼けしない肌に、島本の付けた赤い吸痕が散っていた。

「何を言ってる。俺はお前をとうに、手に入れているつもりだったぞ。こっちには、こういうものがあるんだ。」

島本は、小さな画面に映る朔良の扇情的な写真を見せた。
脅しの材料として朔良を凌辱した写真を何枚も撮っていたが、朔良の打つ手は上を行く。朔良は目を据えて動じなかった。

「馬鹿馬鹿しい。そんなものでぼくを脅すつもり?そんなアイコラ写真、合成で簡単に作れるって誰でも知ってるよ。」

「言っておくけど、合意はなかったからね。断れば、あんた達は全員加害者だから。その写真で脅されて何も言えなかったって、あんたの親に言ってやる。PTAの会長なんでしょ?真面目に部活やってる方が、親にも先生にも受けもいいと思うけど?」

朔良の光る目に島本は気圧され、条件を受け入れて協力すると約束した。一度手に入れてしまえば、手放すには朔良は惜しい存在だった。

その日のうちに、島本ら名ばかりの陸上部員は、朔良の為に砂場の砂を入れ替えて見せた。

*****

朔良は、小学生のころから何故か時々こういう目に遭った。
帰り道、サラリーマン風の男に公園のトイレに連れ込まれたこともあった。学校で一人いると、教師が空き教室へ来いと手招きした。
脳裏でまたか……とあきらめの気持ちが湧いたのも確かだった。彼らは自分たちの行為を、朔良が誘った、そそる目をしたのが悪いと正当化しながら、怯える朔良を撫でまわした。

声を上げずにじっと静かに耐えてさえいれば、いつか彼らは満足し朔良は解放される。
朔良は服従する振りをして、いつか自分が優位に立つ術を覚えた。
間違った方法で朔良は自分の身を守り、それ以上踏み込まれない方法を手に入れた。
今度もそうだった。敢えて自分に執着するリーダー格の島本だけを攻略した。
他の者たちは、会話を聞くうち、女性の方が好きらしいと分かっていたから、そのうち自分に飽きるだろう。

練習用のジャージの中に島本が手を入れてかき回すのを、顔を歪めて朔良は耐えた。
島本だけは朔良を本気で抱く。朔良を傷つけないようにと、周到にローションさえ用意していた。

「しばらく可愛がってやってなかったな。疼いて仕方がないんだろ?反応してる。」

「ち……違う……ぼくは、そんなこと望まない……こんなこと本当はいやだ……」

「いやだって言いながら、感じているんだろ?小生意気な朔良姫はこうされるのが好きだ。」

「や……めてよ……」

朔良は自分の体の兆しに狼狽していた。
どれ程嫌でも、触れられれば生理的に朔良の下肢は反応してしまう。乱暴に擦りあげ、悲鳴を上げるのを島本は楽しんでいた。
薄暗く狭い部室の中で、朔良のしなやかな裸身に、息遣いを荒くして島本は制服のネクタイを緩めながらのしかかって来る。

固く目を閉じれば、大好きな彩がこっちへ来いと手を振った。楔を打ち込まれた朔良は力なく島本の身体を押しやった。
自分に降り注ぐ災禍のような熱情ではなく、片桐里流には自分が一番欲しい彩の笑顔が向けられている。
それが悔しかった。

「……お……兄ちゃん……」

動かなくなった朔良を見下ろして、島本はクスリと笑った。
薄く汗をかいた朔良の上で、ぶんと年に似合わぬ大ぶりの陽物を振り切った。
頬にぴっと残滓の白い滴が散っても、死んだ蛙のように身体を開いた朔良は身じろぎもしなかった。

「イク時は、いつも同じことを言うんだな。朔良姫、お兄ちゃんってのは一体誰なんだ?」

「……」

「何も言わないんだな。俺の手でイっても、好きで抱かれているわけじゃないと言う事か。俺の腕の中で色っぽく哭いていながら、おまえはお兄ちゃんに抱かれているつもりなんだな?目を開けてみろよ。」

朔良は聞こえない風を装って、そっぽを向いていたが濡れた目許は雄弁だった。
決して名前を明かそうとしない朔良だったが、島本は気付いていた。

朔良を見て居ると、視線が常に野球部グラウンドに向かい、直も注意して見て居ると織田彩を追っている。
ハイジャンプの練習をしながら、時折盗み見るように朔良は野球部の様子を見つめて居た。島本の視線に気付くと、朔良は何でもない風を装って、靴の紐を結びなおしたり柔軟をし始めたりする。
同じ苗字とどこか似た面差しに、野球部の織田と朔良は親戚同士らしいと、噂で聞いていたが島本も敢えて何も言わなかった。身体を開く時、ぎりぎりの所で朔良が踏みとどまっていると、島本は知っている。朔良をこれ以上追い詰めるのは、自分にとっても得策ではなかった。

「いいさ。朔良姫の言う事なら、何でも聞いてやるよ。お姫さんというのは、気位の高いもんだ。」

島本の嗜好に合う相手は、これまで中々いなかった。降ってわいた僥倖のように、自分の手に落ちた美しい少年の機嫌を取って飼いならし、傍に置く方が都合が良かった。

しかし、島本も自分の本心を分かっていなかった。
朔良にとって、彩が手の届かない存在であるように、いつか島本も朔良の心を求めて身悶えすることになる。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

昨夜は下書き保存のままで、予約したと思っていた、あんぽんたんのこのちんです。またかよ~

綺麗な男の子にはそれなりの苦労があるのです。可哀そうにね~……(´・ω・`)
島本も彼なりに、さくらを愛しているのでしょうか。 (´-ω-`)ふむ~



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