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小説・若様と過ごした夏・33 

あたしは大人気ない態度をすぐさま反省して、お芳さんと話をすることにした。


切り替えの早いのだけが、取り柄だもん。


何となくお芳さんの考えがわかるのは、昨日憑かれたせいだと思う。


「若様のお母さんは?」


「その事なのじゃが・・・私の力では、奥方様にお会いできませぬ・・・」


え~!?


ちょっと、待って


そこ、限りなく重要な所じゃん。

どうやら、若様の母上様は自分が亡くなった後、体の弱い嫡男の行く末を心配して、とうとう嫡男の守護霊となったらしかった。


お家大事の領主が、最後に頼んだのは嫡男の行く末だったというのが原因らしい。


子を思う母としては、ずっと見守りたいと思うのは無理もないといいたいけど・・・


若様はどうなるの?


お芳さんが言うには、そのまま奥方は嫡男と共に転生を繰り返し、若様のことを少しずつ忘れていったらしい。


記憶の底に悲しみを、沈めてきた・・・という言葉でお芳さんは表現した。


お芳さんは青石に囚われて、ずっと転生がかなわなかったが、奥方の転生の行方を見守ってきたということだった。


そうして執着を無くし、魂が転生を繰り返すことは自然なことだった。


いつまでも過去に囚われているのは、本当は不幸なことだった。


でも・・・

「でも若様は、あんなに母上に会いたがっているのに、どうするんですか?」


「母上がいないと、きちんと成仏できないんじゃ・・・」


「そこが思案のしどころなのじゃ。」


「真子とやら。わたくしも今のまま若様が、こちらにおわすのを善しとは思っておらぬ。」


「いつかは、新しい生を受け生まれて来てよかったと、思うて欲しい。」


「ですから大法要の、ありがたいお経にお縋りして、若さまを浄土へ連れて参ろうと思うのです。」


・・・言っていることは理解できた。


きっとお芳さんの考えは正しいと思う。


でも・・・最後にやっぱり母親が、自分ではなく兄の方を選んだと知った時の若様の気持ちを思うとやりきれなかった。


あんなに会えるのを、楽しみにしているのに・・・


捨てられた事実を、再び若様に突きつけるのはいやだった。


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