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純情子連れ狼 13 

全て秘密にしていたはずなのに、殆どの事を彼らは知っている。しかも、木本は朱美の知らなかった重要な情報を伝えた。

「朱美さん。墨花会会長が、お亡くなりになりました。一応、お伝えしておきます。葬儀の日時は未定です。」

「ちょ……ちょっと待ってよ。周ちゃん、何をどこまで知ってるの?あたし、何も言わなかったのに……」

「朱美の方から、全部話せ。その方が早い。ああ、その前に龍水って言ったか、お前の男?意識が戻ったぞ。少し前に親父がお袋さんに聞いたから、確かな話だ。」

一瞬息を呑んだ朱美は、顔を覆って座席に倒れ込んだ。
車内に嗚咽が迸った。

「龍……水……よ……かった……。」

好きな相手に何かあった時、こんな風に後先考えないで激高するのは自分とよく似ていると周二は思う。

「やっぱり、従姉弟だけあって、朱美は俺と似てるわ。前しか見ねぇのな。撃った相手をぶちのめしたかったんだろ?気持ちはわかるけど、突っ走りすぎだ。」

過去に通りすがりの男に隼が傷付けられた時、真剣に相手をミンチにするほど刻もうと、周二も思った。
だが、その時に周二を殴りつけて言った沢木の言葉が、猛った野獣を正気にさせた。
怒号と共に、周二は病室の床に叩きつけられ、初めて沢木の本心を聞いた。

『わかんねぇ奴だな。』

『おまえは、バカか?考えろ。おまえが年少だの刑務所だの実刑くらって入っている間、誰がこいつを守るんだ?』

『おまえの覚悟は、そんな薄っぺらな物なのか。本気でこいつを、護るんじゃなかったのかよ。』

今の朱美は、あの時赤子のように泣きわめいた俺と同じだ……と、周二は思った。
赤ん坊の元に母親を返してやりたいと、双葉を預かった隼が思っているだろうから、自分もそうする。

「朱美。今のお前が守ろうとしてるのは、どうでもいいちっぽけな極道のプライドじゃねぇのか?惚れた男が撃たれたからって、ガキを置いて追うのは違うだろ?お前が今、一番に守らなきゃいけねぇのはそこじゃねぇだろ?隼ならきっと、朱美が守るのは双葉じゃないのって言うぞ。男の仇を討てたとしても、朱美に何かあったら残された双葉が一人になる。」

「……双葉……ああ、双葉……。周ちゃん……ごめん。」

朱美の頬が、しとどに濡れていた。

「周ちゃん。あたし……一人で龍水の仇を討つ気だったの。……だから、双葉を預けたの。あたしに何かあっても、周ちゃんならきっと双葉を守ってくれるって思ったから……だって、周ちゃん。昔っから優しかったから……」

周二は肯いた。

「下手な小芝居うたなくても、ガキの面倒くらい見てやるよ。行くぞ。仇、討たせてやる。」

****

車は静かに先代の妾の店に横づけにされた。
周二の言った通り、裏口に見張りを付けられて、しょんぼりと佇む張という男がいた。

「どうせ、こいつを道連れに死ぬ気だったんだろう?」

「墓前に供える気だったわよ。おかしい?」

「いや。おかしかねぇ。俺と考えることが、笑えるほど一緒だなと思っただけだ。だけどな、こいつは趙ってやつに使われたただの鉄砲玉で、黒幕は別だ。朱美がガキを残して好きな男の後を追ったって……龍水って言う奴は、喜ぶか?お前の男は、そんなやつか?」

「ううん。あの人は敵討ちなんて考えないで、双葉と二人で生きてくれって言うと思うわ。いつもあたし達の事ばかり心配してたもの。お父さんの容体が悪化したころ、何かが起きそうだって薄々感じていたんでしょうね。しばらくごたごたするだろうから、関東の実家に帰ってろって言ったの。」

「そうか。良いやつじゃねぇか。」

「そうよ。あたしには勿体無いようないい男よ。龍水が自分から離れろなんて、よほどのことだと思ったから、あたしは双葉を連れて関西を離れたの。」

「正解だったな。傍に居たら、朱美もガキも現場でとばっちり食ってたかもしれねぇ。」

「でもね!いくら、意識が戻ったって聞かされても、あの人が望まなくても、このままじゃこっちの気が済まないのよっ!あたしが龍水を置いて、どんな思いで双葉と二人で関西を後にしたか……襲われたって聞いた時には、心臓が縮み上がったわよ!ああっ!もうっ!」

朱美は足を旋回させると、目の前の男をいきなりヒールで蹴り上げた。倒れ込んだ男を直もガンガンと足蹴にする。ぐしゃぐしゃと肉の軋む音がした。
あっという間に、その場に張が吹きあげた鼻血で、かなりの血だまりが出来た。血の海で張は呻きのたうった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)
朱美は、襲撃された墨花会組長(仮)の妻だったのです。
現役バリバリの極妻の朱美ですが、組長の披露目が終わっていないので、まだ世間には認められていません。
(〃ー〃)……みたいな。


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2 Comments

此花咲耶  

けいったんさま

> 周二に諭され 朱美の 双葉の母としての情が 揺さぶられましたね。

自分でも揺れていたと思います。どうするのが一番いいのか、感情が収まりつかなくなった感じです。
>
> 母性の情は薄れても消えてもいないのに 一人でも 仇討をしようとしたのは 脈々と受け継がれた任侠の血のせいでしょう

そうなのです。此花、極妻もの結構好きです。(〃゚∇゚〃)
バシタが惚れた男の仇を討つ、かっこいいです。……どこがBLやねん~ (°∇°;) やばす~

> さっさと 落とし前をつけて 早く 双葉の許に戻らなくてはね♪

(。'-')(。,_,)ウンウン 隼ちゃんが困ります。

> しかし 小気味良く パコーンと蹴り上げ 「これでもか! これでもかぁ~!」と、ガンガン足蹴りにする姿は 鬼女そのものですねー!
> 怖いよ、朱美ー!ヒィ---!!!ΣΣ(゚Д゚;ノ)ノザザザザッ!!...byebye☆

あら。ドン引きされてしまったわ……[壁]゚×゚)\チラッ
女将さんに比べたら、あたしなんか優しい方よ~ ヾ(〃^∇^)ノ

コメントありがとうございました。(*⌒▽⌒*)♪

2013/10/09 (Wed) 19:54 | REPLY |   

けいったん  

周二に諭され 朱美の 双葉の母としての情が 揺さぶられましたね。

母性の情は薄れても消えてもいないのに 一人でも 仇討をしようとしたのは 脈々と受け継がれた任侠の血のせいでしょう

さっさと 落とし前をつけて 早く 双葉の許に戻らなくてはね♪

しかし 小気味良く パコーンと蹴り上げ 「これでもか! これでもかぁ~!」と、ガンガン足蹴りにする姿は 鬼女そのものですねー!
怖いよ、朱美ー!ヒィ---!!!ΣΣ(゚Д゚;ノ)ノザザザザッ!!...byebye☆


2013/10/09 (Wed) 09:52 | REPLY |   

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