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純情子連れ狼 9 

やがて時は経ち、祖父が亡くなり周二の父親の代となった。

木庭組は移りゆく法律と共に形を変え、いつしか事業で多忙となっていた。
しかし、関西と疎遠になっても木庭組の親組は墨花会だと、祖父が一度口にした以上は組の掟になる。大怪我以来、表舞台から引いた周二の父親も、義理ごとに顔は出さないまでも、祖父の思いを汲んで先々代の月命日にはなにがしかの金を包んでいた。

****

電話を終えて戻ってきた父親の顔は、晴れなかった。

「木本。ちょいと、面倒なことになりそうだ。」

「墨花会の先代に何かありましたか?」

木庭組三代目は、木本に向かって軽く頷いた。どうやら、墨花会先代は、まだ公にはなっていないが早晩亡くなったらしい。

「ここだけの話という事だった。死ぬ間際に、ただ一人の俺の身内だから、死んだら木庭に知らせろと言ったらしい。虫の知らせだと言ったら、電話口で咽んでいた。姐さんも心細かったんだろう。」

「いくら気丈でも女ですからね。姐さんも気の毒ですよねぇ。息子が撃たれて気落ちしているところへ、長年付きっきりで看病していた墨花会会長が亡くなるなんて。」

「とうに覚悟はしてたと思うがな。高齢の会長には、おそらく襲撃された話はしていないだろう。会長は、自分の目が黒いうちに、大学を出たばかりの一人息子が跡目を継いでくれて、ほっとして逝っただろうなぁ。今頃、死んだ爺さんに会って報告しているかもしれんぞ。」

「信玄じゃありませんけど、できるなら会長の死は周囲にしばらく隠しておいた方が良いと思います。」

「そうできればいいんだが、若い者が数人ずつ交代でずっと病院に張り込んでいるらしいから、話は直ぐに伝わるだろうと言っていた。誰と誰が通じているか分からないから、姐さんも手の内を全部明かすわけにはいかないんだそうだ。だがなぁ、恐らく、会長の息のある間は遠慮して息子の跡目に文句を言わなかった奴が、たんこぶがいなくなったと知って早速蠢きだしたんだろうさ。そこらへんは、姐さんも認めた。恐らく入院中から方々へ根回しに動いていたんだろう。でなきゃ、こうスムーズに話は進まないし、誰が組長をやったんだって子組や年寄りが騒ぐはずだ。それがないってのが、おかしいだろ?報復より先に跡目の話が出るのが、余りに用意周到すぎる。」

「すると……裏切ったのは、一番傍に居る男。若い組長の守り役……ですか。補佐の立場っすよね。確かに、血のつながった今の組長がいなくなれば、墨花会が転がりこむのは、№1の若頭の所でしょうね。若いやつを抱き込むのも一番容易い。」

「そう考えるのが、妥当だな。」

「傍で支える振りをして、ずっと狙ってたのか。汚ねぇな。だけど、組長の地位ってのは、そんなにいいもんかよ。俺には分からねぇな。でかい組の頭なんて、まとめるのもめんどくさいだけじゃねぇか。」

「周二。お前は若いから、そう思うだろうけどな。人によって欲しいものは色々だ。数万人のてっぺんに昇ったら、金と名声と地位が一度に転がりこむんだ、普通なら目の色も変わるさ。それに、俺には何の苦労もしていない小便くさい若造の下に付くなんてまっぴらだって言う、たたき上げの気持ちもわからないでもねぇ。極道は極道なりに、下から順を追って這い上がっていくもんだって思ってるからな。」

「そんなもんかよ。」

「補佐について居たら、若い組長のアラが見えて、なおさら腹立たしいんじゃねぇか?墨花会みたいな大きな組織になると、上納金として入って来る金も莫大だ。だからここぞとばかりに魑魅魍魎が頭をつけ狙うのさ。どうせ担がれるのなら、乗る神輿はでかい方が良い。」

「そうか……でも、結局は欲が動いてるってことだな。うちはちっぽけな組で良かったな、親父。」

「ああ。金儲けの上手い木本のおかげだな。俺は楽させてもらってるよ。」

「よしてください。性に合ってるだけです。」

木本は珍しく照れた。
木庭組は、周二の父親が組を継いで以来、時代の流れを読み水商売に力を入れている。大怪我をして以来、殆ど表舞台から周二の父親は身を引いていた。

インテリ893の走りともいうべき、木庭組筆頭の木本は商才に長けていて、何軒かの店を扱って組の屋台骨を支えていた。普段、反社会的組織と言われる組との付き合いは形だけになっている。
だが、関西の墨花会という名を聞いて、極道から一線を引いた木庭組も無関係とは言えなくなった。

「さて。木本も久し振りに、極道らしいことしてみますか。」

どこか楽しげな木本だった。




本日もお読みいただきありがとうございます。(〃゚∇゚〃)

どうやらどっぷり足を突っ込んでしまった、関西の跡目争いです。しかも、襲撃された組長は重傷で、先代は亡くなっていました。大変です~(°∇°;)
朱美と双葉は…… ヾ(〃^∇^)ノ ま、いいか~

※出てくる団体は、あくまでも此花の想像の世界の産物です。既存の団体等とは無関係です。


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