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小説・若様と過ごした夏・31 

おばあちゃんから、事のあらましを聞いたママと佳奈叔母さんは思い切り感動していた。


「あんた、勉強はからきしだけど役に立つこと有ったのね。」


「一言多い。」


褒められている気がしないぞ、ママの馬鹿。


あたしはその夜、夢を見た。


ほんの少し関わった乳母と呼ばれた婦人が、懸命に若様の母上を探している。


火の中に子供を残し、お家のために落ち延びながら、やがて病気になってしまったかわいそうな奥方。


そんな時代があったのは知っていたけど、今知るとすごく悲しかった。


若様が、あれほど望んだ母上に会えますように。


夢の中でも、本気で願った。


大法要の朝。


「うわ~。

宗ちゃん、どうしたの、その顔。」


今日、若様とお別れをするはずの、宗ちゃんの顔のクマはいつにもましてひどかった。


母上に会えるかもしれないと思うと、若様はじっとしていられず、宗ちゃんは付き合ったみたいだった。


「何してたの?」


「すごろく。」


双六・・・?って、あの正月にサイコロ転がして遊ぶ・・・?


「そう・・・何度も何度もね。」


一晩中、傍目には一人でサイコロを転がしていたはずの宗ちゃんは、ぐったりと横になった。


「も・・・駄目っす・・・」


宗ちゃんが倒れて眠ってしまったので、あたしは若様を連れて外へでた。


「今日でお別れね。」


「真子のことは、終生忘れぬ。」

・・・ちょっと、違う気もするけど。

風が心地よく、若様は全て悟っていた。


「わたしがいると、どうやら宗太郎殿は命を縮めるようじゃな。」


「宗太郎殿に、礼を言ってくれ。

真子に貰ったりんご飴の甘さは忘れぬ。」


そっか、霊は自分では食べられないから、宗ちゃんの味覚を借りたんだった。


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